第11話 探し人

ある日わたしは、荒川さんに用があって、営業所を訪れた。


「あれ?荒川さん、いないんですか?」


荒川さんは、営業所の課長さん。

とても優しくて、面白くて、そして、背が低い。

そんな荒川さんは、みんなから好かれている。


「えー?さっきまでいたんだけど・・・・どこ行っちゃったかな?荒川さーんっ!」


周りにいた営業の人達がみんな、荒川さん探しを手伝ってくれる。


机の上の書類をひっくり返し。

棚の下を覗き込み。

机の引き出しの奥を覗き込み。

ペンケースの蓋を開けて、中を覗き込み。


「荒川さーんっ!」

「なんだ?どうした?」


荒川さんが、他の営業所から戻って来た。


「なんだ、荒川さん、どこ行ってたんですか。今みんなで探してたんですよ」

「どこ探してんだっ、お前らは!」


まったく!と。

荒川さんは胸を張り、鼻息も荒くそう怒る。

いや。

怒ったフリをする。


胸を張っても小さい荒川さん。

みんな大好き、荒川さん。

荒川さんを探すときは、いつもこんな光景。


荒川さん。

今も、元気でいるかな。

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