第16話 狩りの始まり

 夜、沙姫さき沙夜さやは庭に出て、空気中の水分を使い、気配を探る、探知できるのはせいぜい半径300メートル位である。

 湿度が高ければもっと遠くまで探知できるが天気は味方をしてくれない。

 集中できるのも30分位である。

 次の夜も二人は気配を探る、獲物がかかるまで根競こんくらべである。

 そして、10日目の夜、壁にくっついて離れない人物を確認する、そこへ人が通りかかると突然動き、二人は一つになって移動を始める、沙姫と沙夜はこの人物を逃さないように追う、途中、この人物は林のある所に止まる、そして、しばらくすると再び動き出す、追い続けると家の中に入って行った。

 沙姫と沙夜は表札を確認する。

 そして沙姫は、青山あおやま刑事に電話する。

   「犯人と思われる人物が、被害者らしき人物を連れて、朝倉あさくら町の影山かげやまという

    家に入りました。」

   「犯人の姿はみているか?」

   「いいえ、探知で確認したのです。」

後は、警察に任せて、そこから離れてくれ。

 警察官が数名、影山方に向かう、

 警察官は不審者が入ったと通報があったということで家人に面会しようとするが家には人の気配がなかった。

 外から家を確認すると室内には5人の女性の姿が確認できるが動く気配がない。

 そして、ガラスを割り、室内を調べると5人分の女性のはく製と腹を裂かれた女性の遺体が発見される。

 犯人の姿はなかった。


 しかし、この家の鑑識から容疑者が浮上する影山初郎かげやまはつろうである。

 彼には殺人の前科があった。


 青木は沙姫に電話する

   「君の連絡どおり、被害者を発見した。」

   「犯人はどうしました。」

   「犯人には逃げられたが、容疑者が判明した。」

では、ご褒美ほうびいただけますね。

   「何のことだ。」

   「デートです。」

   「捜査で忙しいんだぞ。」

   「分かっています、半日で構いません。」

   「では、日曜日午後1時に朝宮あさみや町の遊園地の前で」

沙姫は青木とのデートの約束を取り付ける。


 沙夜の部屋の中に沙姫が入って来る

   「例の家から被害者が見つかつたそうよ、沙夜。」

   「犯人はどうしたの、沙姫。」

   「逃げられたそうよ。」

   「では、狩りをしないと。」

   「そうね、狩りを始めましょ。」


 日曜日、沙姫は時間どおり遊園地に来る、青木はすでに来ていた

   「お前、何のつもりだ。」

   「青木さんとデートしたかったんです、さあ、何に乗りましょうか。」

青木は、沙姫と話しながら遊びに付き合う、そして、最後に観覧車に乗ることにする。

 青木は沙姫に言う

   「水を操る能力は便利だな。」

   「そうですね、弱点はありますよ。」

   「その力なら人一人消すことも出来そうだな。」

   「ええ、もちろん。」

   「その力で人殺したことあるんじゃないのか。」

   「もし、殺していたらどうしますか。」

青木を映す沙夜の目はあやしく輝いていた。



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骨みる少女 ぽとりひょん @augift0925

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