第11話 ハングマン

 香奈かなのスマホに僕ちゃんから連絡が入る

   僕を置いて行っちゃうなんてひどいよ。

   もうあわないから

   君の匂い覚えたから大丈夫、会いに行くからね

香奈は犬じゃあるまいし、匂いで追ってこれるかと思った

   しかし、連絡は続く

   君、浜田駅はまだえき使ったんだね、どこの駅で降りたの?

香奈はだんだん僕ちゃんに追いつめられる思いに駆られる。


 翌朝、香奈は沙夜さやにスマホを見せ相談する。

   「この男は何?どうして追われているの?」

   「学校ではちょっと話せません。」

   「なら、明後日みょうごにち竜弥たつやの家で話そう。」

   「えっ、古馬ふるま君の家で?」

   「毎週日曜日竜弥の家で昼食を竜弥の母親と作っている。」

   「その時、みんな集まれば都合がいい。」

竜弥が話に加わる

   「僕の都合は?」

   「竜弥、私より大事な用事あるの。」

   「いえ、ありません。」

そう言われると竜弥は弱い。

 結局、古馬家で昼食を食べてから、竜弥の部屋で話をすることになった。


 午前中、沙姫さきと沙夜が竜弥の家に来る。

 沙夜は母千鶴子ちづこと昼食の準備をし、沙姫は竜弥の部屋に入る

   「竜弥君、私たちが人を殺して、どう思っているの。」

   「どうも何も僕も黙って見てたんです、同罪ですよ。」

   「それに沙夜のいない人生なんて考えられない。」

沙姫は竜弥が殺人のことを悩んでいると思っていたが、予想外に竜弥は割り切っていた。

   「でも、私たちは、戦っているわ、死んでしまえば、私も沙夜も居なくなって

    しまうわよ。」

   「信じてますから、勝つって。」

米霧香奈よねぎりかながやって来る。

 香奈は竜弥の部屋に恐る恐る入ると見まわした。

   「いかがわしい物はありませんね、安心しました。」

香奈が言う、竜弥が震えながら聞く

   「いかがわしい物って?」

   「幼女のいやらしい写真とか。」

沙姫が竜弥を白い目で見る

   「待っている訳ない!」

竜弥が叫ぶと沙姫は竜弥のベットの下に手を入れる、そして一冊の本を取りだす。

香奈が

   「やはり」

とうなづき、竜弥は青くなる。

それはアイドルのグラビアだった

アイドルは少し沙姫と沙夜に似ている

香奈は

   「年上好きでしたか、熟女じゅくじょ好きと言うやつですね。」

   「もう、君は黙って。」

竜弥は泣きそうになる

沙姫は

   「このくらい男子なら普通じゃないの。」

と言い、香奈に

   「今、見たことは忘れるのよ。」

   「どうしてですか。」

沙姫は香奈の顔を見て

   「どうしてもよ。」

   「ひゃい、忘れます。」

香奈はおびえる。

 竜弥はまだダメージから回復していない。

 沙夜が昼食ができたと呼びに来る。

 昼食は人数が多いためか力が入っている。


 食事が終わり、竜弥の部屋に集まる。

 香奈が話始める

   「私はスマホを使って、少女にお金を払っていやらしいことをする男たちを殺

    してきました。」

   「いつもカッパを着て男と待ち合わせをしてラブホテルの部屋に入ると力で男

    の腹を横一文字よこいちもんじに切り裂いて苦しみながら死んでいくのを見て、死んだら財

    布とスマホを奪って外で粉々に刻んで証拠隠滅しょうこいんめつしていました。」

竜弥が

   「ホテルのカメラはどうしたの?」

   「力で空間を操作して映らないようにしていました。」

沙夜が

   「竜弥、ラブホテルのカメラのこと知っているの、まさか入ったことある

    の。」

   「違うよ、噂で聞いたんだ、カメラで監視かんししていて学生が入るとばれるっ

    て。」

竜弥が否定するが、沙夜の目が怖い

   「そして先日、あの男に会ったのです。」

   「男のことを僕ちゃんと呼んでいました。」

   「その姿は異様いようで、年は40歳代位で背が低く155㎝位なのに体は筋肉質で

    した。」

   「そして、黒色タンクトップにカーキ色の半ズボン姿でズボンはベルトではな

    く太いひもで結んでいました。」

   「僕ちゃんとラブホテルの部屋に入ると腹を狙って力を放ちました、しかし

    避けられました。」

   「まぐれと思い何度か力を放ちましたが全て避けたのです。」

   「僕ちゃんは、私に殺気があるから分かると言いました。」

   「そして、僕ちゃんと戦いました、しかし、人とは思えないような身のこなし

    で私の攻撃を全てかわし、私の後ろを取ると腰に結んでいた太いひもを私の

    首に巻き付けて釣りあげました。」

   「私は暴れましたが、僕ちゃんは重さも感じていないようにびくともしなかっ

    たです。」

   「私はひもを力で切断して、ホテルのドアを壊して逃げました。」

沙姫が

   「人間離れした力と身のこなしをしていたのね。」

   「はい。」

   「それから、浜田駅から逃げたのですが、私の匂いを追って浜田駅まで追って

    きました。」

香奈はスマホのやり取りを見せて言う。

 沙姫は青木あおき刑事に電話すると僕ちゃんの特徴を伝える

青木は

   「それは、ハングマンだな、どこで見た。」

   「いえ、変質者のうわさがありまして、そのハングマンは体のどこかに刺青いれずみがあ

    りますか?」

   「それは署で調べないと分からないな、明日放課後電話すればいいか?」

   「お願いします。」

沙姫が礼を言って電話を切る。

 竜弥君、ハングマンで検索してみて

沙姫に言われる通り検索すると

   ハングマンは犯罪者の通り名だった。

   小倉三春おぐらみはる、45歳、全国指名手配、殺人で死刑囚しけいしゅうとなるが独房どくぼうを素手で破壊

   して逃走

   殺し方が、少女の首をひもで巻き付けて釣り上げ絞殺こうさつするためハングマンと

   呼ばれる

4人は、ハングマンをどうするか相談しようとすると

母がコーヒーとケーキを差し入れた。

 沙夜は香奈に言う

   「自分で対処できないのならこういうことはやめるべき。」

   「やめられません、もう一人の自分が復讐しようとするのです。」

香奈は首を振る。

 沙姫が

   「今回は指示に従ってもらうわ。」

   「ハングマンは殺さない、警察に引き渡すわ。」

   「どうしたの、沙姫。」

   「青木刑事に借りを返すわ、沙夜。」

   「どっちみち死刑だから一緒ね、沙姫。」

4人は今度こそハングマン対策を相談する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る