第9話 香奈の日常

 沙夜さやの部屋に沙姫さきが入ってくる。

   「香奈かなの力、感知できました?沙夜。」

   「ええ、突然、空間に裂け目ができました、沙姫。」

   「というと空間をコントロールする力かしら。」

   「事前に察知するのは不可能かも。」

   「よく観察する必要がありそうね、沙夜。」

   「そうすれば対応策あるかも、沙姫。」

沙姫と沙夜は、香奈の力について話し合う。


 米霧香奈よねぎりかなは二つの顔を持つ。

 一つは東海北高校の2年4組の生徒である。

 男が苦手でいつも友達に守ってもらっている、臆病おくびょうな女の子である。

 一つは少女を狙う男を殺す殺人鬼である。

 スマホを使って獲物えものを呼び出し、ラブホテルへ行き、部屋に入ったところを能力を使って腹を横一文字よこいちもんじに裂き殺す。

 スマホと財布は能力で細かく刻み、防犯カメラの映像も自分の周囲だけ空間を曲げ、モザイクのような映像しか残らない。

 そうやって、中学2年生の頃から犯行を繰り返してきた。


 香奈の学校生活の朝は沙夜に挨拶あいさつしに行くことから始まる。

 沙夜の前の席には竜弥がいるが挨拶しない、いないことにしている。

 竜弥を殺そうとした後も、沙夜も沙姫の態度を変えず接してくれる。

 挨拶が終わるとクラスの友人たちと一緒に過ごす、一人になると男子が近寄って来て怖い。

 それでも一人になることがある、先日の自転車置場がそうだ、沙夜が助けてくれた。

 今日もたまたま一人でトイレに行った後、男子が近寄って来た

   「米霧よねぎりさん好きです、これまでなかなかこういう機会なかったけど付き合って

    ください。」

なぜか香奈が一人でいると男子が近づいて来る

香奈は後ずさる、男子は近づく、とうとう廊下の壁際かべぎわまで来てしまった。

 もう、逃げ場がない

   こないで、こないで・・・

さらに男子は近づく、その時、香奈はバチンと男子の頬を張り倒し、脱兎だっとのごとく逃げ出す。

 香奈は成長していた間違った方向へ・・・


 香奈は帰宅すると叔母と一緒に夕食を作る。

 そして、叔父が帰宅すると3人揃って夕食を食べる。

 風呂はいつも一番風呂だ、叔父叔母が一番風呂に入るように言って譲らないのだ。

 そのあとは、学校の勉強を手早く済ませ、寝るまでスマホを操作する。

 男性からの誘いは常にある、しかし、叔父叔母にバレないようにするため、香奈の行動範囲で会ってくれなければならない。

 数ある会話相手の中で気になる人物がいた。

 最初は女性が男の真似をしているのかと思っていたが、本当に男らしい、彼は自分のことを僕と言っているので

 心の中でと呼んでいる。

 その僕ちゃんから連絡が入る

   今、神奈川にいるんだけど、来週、浪江なみえという所へちょっと遠いけど行くんだ

   へえ、仕事?

   そんな感じかな、東海市の南にある町なんだって

香奈は南隣にある浪江市に間違いないと確信する

   そこたぶん、私の住んでいるところから近い所だよ

   そーなんだ、会えると嬉しいな

   会ってどうするの

   男と女が合うんだからわかるでしょ

   それならお小遣い欲しいな

   いくら?

   3万円

   なら、5万円出しちゃうけど

   いいよ、夜8時以降なら大丈夫

   分かった、来週連絡するから待ち合わせ場所と時間決めましょ

   うん、楽しみにしている。

 香奈は

   「本当に楽しみ、新しいカッパ買わなくっちゃ。」

独り言を言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る