第4話 伸
入学式の時、1年1組
彼女の名はすぐに分かった、入学時から既に有名人だったのである。
伸は、1年2組の
彼は
ゲーム好きで他に趣味はなく、勉強以外の時間はゲームをして過ごしている。
伸が告白するチャンスは以外に早くめぐってくる、たまたま校舎裏へ行ったとき
沙夜が一人で立っている。
彼女は、少し前、男子にここへ呼び出され告白されたところだった。
伸は、勇気を振り絞って沙夜に話しかける
「こんにちは、僕は1組の鏑木伸、2組の舟戸さんだよね。」
「ええ」
沙姫は返事をする
「入学式の時から君のこと気にしていたんだ。」
「僕と付き合わない、どぉ?」
彼が話を続けると
「どこに付き合うの?」
彼女は的外れなことを言う
「え、水族館、そうだ水族館へ行こう、次の日曜日どお?」
成り行きで伸はデートに誘うことになる。
沙夜は、スケジュール帳を開き
「午前中と午後1時までならいいわ。」
彼女は男子からの誘いをスケジュール帳で管理している。
「じゃー、
伸は、浪江市の浜田駅を指定する、駅から水族館へ行くバスがあったからである
「わかった、約束ね。」
沙夜は答える。
伸は浮かれた舟戸沙夜とのデートである、彼は水族館を下見するまで入念に準備する。
デート当日、伸は自分の立てた計画が音を立てて崩れるのを感じる。
沙夜は関心を示さなかった、魚のみならず、ペンギンやイルカにさえ無関心だった。
唯一、クジラの
伸と沙夜は、一通り見学を終えると水族館の中のレストランで早めの昼食を摂る
「クジラの骨格良かった?」
彼は、引いてはいけないトリガーを引いてしまう
「あれだけ大きいと骨格標本にするの大変ね。」
「でも、小動物なら私たちにも簡単に作れるわ。」
「死体を用意したら皮をはいで内臓や肌肉を取り省いて行くの。」
「骨に残った肉はポリデントに漬けると分解されてきれいになるわ。」
彼女の骨格標本の話は止まらない。
伸は、沙夜が死体をさばくところを想像し食欲を失くしてしまう。
彼は夢に見るかもと思いながら、彼女の話を聞き続ける。
沙夜と付き合う男子の中から
彼女の無関心な反応と骨への
「もう、付き合えない。」
と去って行った。
伸は沙夜に会うと
「この前はありがとう、水族館はどうだった?」
声をかける
「そうね、骨格標本はまあまあかな。」
沙夜は言う
「見たい映画ある?」
話を続ける
「特にないわ。」
彼女が答えると
「僕、見たい映画あるんだ、好きなゲームが映画化されたんだ、一緒にど
お。」
再びデートに誘う
「いいわよ。」
彼女の返事に
「日曜日空いてる?」
彼は予定を聞く
「午後からなら大丈夫よ。」
スケジュール帳を見ながら彼女は答える
「なら浜田町のショッピングモールの映画館でいいかな。」
彼は聞く
「ええ、それなら浜田駅に1時に待ち合わせでいいかしら。」
彼女が待ち合わせを指定する
「うん、分かった。」
彼は返事をする。
日曜日、伸と沙夜は一緒に見る、映画は伸の予想を上回る出来栄えで、見どころも
彼女も黙って映画を見ている、時々首をかしげながら、無表情に・・・
映画の上映が終わって、二人は、ショッピングモールのフードコートに移動する。
伸は炭酸飲料を選び、沙夜はホットコーヒーをブラックで飲む。
彼は
「面白かったね、迫力もあったし予想以上だつた。」
そして、作品の魅力について語ろうとすると
「あれおかしいわ。ストーリーはよくわからなかったけど、特に終盤に仲間を
助けようと敵に突っ込む人・・・」
彼女の言葉に彼はあぁ、主人公が活躍するところだと思う
「あの人、車にはねられて足が動かない状態だから
走れるわけないし、もし動いたら血管に触って多量の出血をしてしまうわ
それに・・・」
沙夜の言葉に伸は自分の好きな世界が壊れていくのを感じる、頭の中は真っ白になり、思考は停止していく、彼女の話は続いていたが、彼は突然立ち上がり
「帰る!」
と一言いい、彼女を残したまま立ち去る。
その後、伸は沙夜に話しかけることはなかった。
伸は、沙夜を忘れるため、ゲームにのめりこんでいった。
そして、5月の下旬、沙夜にアタックしていた男子が全滅したことを知った、
しばらくして奇妙な噂を聞いた
あの沙夜がクラスのある男子と毎朝挨拶を交わしている
と言うものだったが、伸にはどうでも良いことだった。
彼は、ゲームに熱中するのに反比例して成績が下がった。
これに彼の父親は激怒しインターネットの契約を解約すると言い出した。
ネットがないとオンラインゲームができない伸は成績を上げると約束することで切り抜けた。
彼は夏休み中、勉強に時間を割いて過ごした。
二学期が始まって早々、同級生の女子が殺された、この時、伸は何故か沙夜の顔を思い浮かべた。
そして間もなく犯人は逮捕された。
同時に沙夜とクラスメートのうわさが流れてきた
二人は名前で呼び合っている、彼は沙夜に毒されてしまった
と伸は頭の片隅にそのクラスメート
の名前を覚えた。
冬休み、伸はショッピングモールのゲームセンタでゲームに集中していると、後ろから中年らしい男の声が聞えてくる
「ほぉ、うまいものだ。」
彼は無視しゲームを続けるが男が後ろから見ている、ゲームを終えると男は話しかける
「その才能はゲームだけの物か?」
伸は答える代わりに
「おじさんのおかげで集中できなかった。」
と抗議する。
「それは済まなかった。また会おう。」
男は謝罪すると立ち去る。
数日後、伸が町のゲームセンターから出てくると先日の男が話しかける
「ゲームではなく本物の狩りに興味はないか。」
彼は男を無視して立ち去る。
男は、度々伸に声をかけてくる。
男が言うには
伸には才能があり、ゲームではなく、現実の世界でゲームのように力を振るっ
てみないか
と言うものだった。
伸は、当然、男を無視する、犯罪者になるような話に乗るわけない。
3月中旬、この日はいつもと違っていた、伸は父親とけんかして飛び出してきたのである。
原因は、オンラインゲームである、伸は高校での成績を上位に付けていたが、父親はオンラインゲームを禁止する。
彼は父親との口喧嘩の末、家を飛び出す。
そして、伸は町のゲームセンターでゲームをしていると男の声がする
「今日はキレがない、集中していないな。」
彼はゲームを中断し、男を
「話していたことは本当か?」
「嘘は言わない、本当のことだ。」
男は答える。
「なら、力をくれ。」
伸が言うと男は名乗る
「私は
「俺は鏑木伸。」
彼も名乗る。
二人はゲームセンターから立ち去った。
逢儀の居所は、東海市
その倉庫は、かって
倉庫の一部が仕切られており、そこにはテーブルとソファの応接セットと木製の事務机が置かれ、本やメモ紙が乱雑に置かれていた。
逢儀は、伸に
「ここへ移ったばかりでね、何もないが、まぁ、くつろいでくれ。」
応接セットのソファに座るように勧める
「私は君に必要なものを用意しよう。」
逢儀は言葉を続けながら伸にホットコーヒーを出す、ブラックである。
彼はブラックコーヒーは苦手だったが、苦みをこらえ飲む、逢儀に弱みを見せたくない思いが勝つ。
すると伸は強い眠気に襲われる、彼は
もう、くすりの効果は切れているはずだが・・・逢儀の声が闇に響き、伸は目を覚ます。
逢儀は言う
「両手の甲を見なさい、それが力の証だ。」
伸が両手の甲を見るを丸の中に模様のある
彼は何だこれはとうろたえる、すると右手のひらから炎が噴き出す前にいた逢儀に向かって、しかし、逢儀は何かに守られているようにその炎を弾く。
「落ち着きなさいコントロールするのだ。」
と彼は言う、伸が落ち着くと炎は治まる
「力について説明しよう右手は承知の通り炎を操る、集中しコントロールする
ことでもっと大きく強力な炎を使える」
「左手は物を折り曲げる力だ、非常に強力だがコントロールが難しい訓練が必
要だろう。」
逢儀は伸に力について説明する。
伸は、倉庫内に放置されている鋼材に向かって右手をかざし炎をイメージする。
すると右手から炎が噴き出し鋼材を熱する、さらに炎の強い流れを意識すると噴き出した炎は激流となり鋼材を赤く焼く。
「初めてとは思えないな、この力は君と相性が良いようだ。」
逢儀は
次に彼は左手を鋼材に向け折り曲げるイメージをするが何も起こらない
逢儀は
「最初から無理だ。」
と細い木の棒を差し出す。
「手で追った方が早い。」
伸は文句を言いながら、木の棒に集中する、バキッと音を立て棒が折れる。
彼はそこから呑み込みが早く二日後には鋼材を頃曲げるようになる。
その夜、逢儀は伸を浪江市内へ連れ出し
「私が選んだものを焼いてもらおう。」
と言い、中年男性を選ぶ、伸はためらいなく右手から炎を出し、男を焼き殺す。
次の夜、逢儀は酔った男を選ぶ、伸は四肢を一本づづ折り、最後に首の骨を折る。
逢儀は結果に満足しているが、伸は
「抵抗しない相手じゃ楽しめない。」
と不満を漏らすと
「最初の舞台は私が用意しよう、少し待つといい。」
逢儀はなだめる、期待を内に秘めながら。
春休みに入ってしばらくすると逢儀から伸に連絡が入る。
ショッピングモールのゲームセンターでゲームをするというものである。
伸が連絡の通りゲームセンターでゲームをしていると5人組の青年に囲まれる
鏑木伸だな、ちょっと来てもらう。
青年の一人が言うと彼は
青年たちと伸は駐車場まで移動し、ワゴン車に乗り込む、そしてショッピングモールから立ち去る。
車の中で
「こいつ、おとなしすぎないか?」
「ビビってるんじゃないか。」
「でも、こいつ強いんだろ。」
「しかも、親が金持ちなんだろ、恵まれているなぁ。」
青年たちは口々に言う、伸は金持ちなんて初めて聞いたと思いながら質問する
「僕をどうするのですか?」
青年の一人が
「僕?僕ちゃんかーあははは」
「着いてからのお楽しみだ。」
応じる。
ワゴン車は
中に入ると数十人の青年が鉄パイプやバットなどの得物を手に待っていた。
伸は青年たちの輪の中に
輪の中からリーダーと
若者たちから歓声と冷やかしが上がるが青年が右腕を小さく上げると建物は沈黙に満たされる。
青年が話しかける
「お前、俺たちが弱いって言っているそうだな、一人で全滅できるともな。」
伸は
「言った覚えはないが、やるなら全員で来いよ。」
平然と言い返す。
青年は顔を赤くして右手に鉄パイプを持ち、伸の左側頭部目掛けて鉄パイプを振る。
しかし、鉄パイプは当たらない、青年の右腕は折れ曲がっている。
伸は左手のひらを向け、青年の足を折り曲げる。
「だーぁ、どうなっている、お前、何をした!」
青年は叫ぶ、青年たちは何が起きているのか理解できなかった、しかし、コケにされたと理解する。
それで十分だった全員が伸に向かって行く、伸は次々と腕を足を折り曲げていく、まるでシューティングゲームのように、最後は逃げ出す者もいたが一人も逃さなかった。
伸は、倒れている青年たちに向かって告げる
「敗者には罰ゲームが必要だ。」
青年たちは、
「もう十分だろ。」
「俺たちの負けだ、逆らったりしないから。」
「俺たちのリーダーになるのはどうだ。」
伸は無視して、右手を最初の一人に向け、炎の激流で一瞬にして焼き殺す。
「わーっ、やめてくれ!」
「頼むから殺さないでくれ。」
必死の
次第に命乞いの声は小さくなり、ついには聞えなくなった。
伸は知らないうちに笑みを浮かべていた。
建物の中に逢儀が入って来る、そして、逢儀は拍手をすると
「見事だ、私の演出はどうだったかね?」
と尋ねる、伸は
「悪くはなかった、だが、相手が弱すぎる。」
笑みに顔をゆがめて言う
「君が強すぎるのだ。」
逢儀は、伸を
「が、強い相手はいる。」
逢儀の言葉に伸は喰いつく
「誰だ!教えろ。」
「戦えば命を落とすのは君かもしれないぞ、それでも良いか?」
逢儀は問う
「ああ、教えてくれ、それこそ望むところだ。」
伸が答える。
「ならば教えよう、舟戸姉妹だ、君と同じ高校だったな、
だ。」
伸は逢儀の言葉に耳を疑う
沙夜と姉の沙姫だって、何かの間違いじゃ
構わず説明は続く
「二人は魔法使いだ、水を自在に操り、刀や盾は鋼鉄に匹敵する、しかも動き
が早い、君でも苦戦は避けられないだろう。」
伸は目を輝かせる嬉しそうに・・・
逢儀は伸がやる気であることを察すると
「今度は自分の好きな舞台を作って戦うと良い。」
自分の作品が魔法使いを超えることを期待して言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます