第3話 タコとイカの加工工場

 3度目に受けたバイトはタコやイカの加工工場であった。正社員募集のところにアルバイトも同時募集と書かれていたため応募した。バイト募集がないところはともかくいきなり正社員はやはりハードルが高いと思ったからである。徒歩で20分弱とのことだったが、前回と同じようにグーグルマップとちょっと違うルートを進んだためかまた遅刻しそうになってしまったが、なんとか走って間に合い職場に入ることができた。事務職っぽいおばさんに面接室に案内されてしばらくすると恰幅の良い眼鏡をかけたおっさんが現れた。どうやらここの主任らしい。電話でも聞かれたことと同じ20㎏くらいの重いものを持つ作業があるが体力や腰に問題はないかを聞かれたぐらいで(その当時そのぐらいの重さのダンベルを使っていたのでそこは地震があると答えた)あとは工場の前にカウンター式のフォークリフトがあったため資格のある自分もそれを使用して活躍できたら……みたいなことをアピールした、そして最後にバイトからでも良いというと

「えっバイト希望だったの?」

と不思議な顔をされたがその後すぐに履歴書を返され採用の場合は電話をすると言われ面接は終わる。当然連絡などこなかった。また数か月後そこが求人を出していたため再応募するも例によって面接すらしてもらえず書類のみで不採用を言い渡されたのであった。

さて面接を落とされたのは仕方ないとしても、これは何かの間違いだということで何度も電話をかけた。しかしその後タイミングが良かったのかこの工場の社長と話をする機会があり、自分と似ている境遇だったためか深い話をすることができた。そこで社員募集に正社員だけでなくアルバイトも同時募集していると書いてあったから応募した旨を伝えると「いやあれはパートさんしか雇っていません」と答えたのである。ただ自分は履歴書にもバイトとして記入し、前回も履歴書と共に履歴書を渡したのだが履歴書にちゃんと正社員と書いてあったのが救いだった。どうやら履歴書はパート用のものと、バイト用のものを渡していたらしい。そのため向こうも勘違いをしたのだろう。自分はバイトで採用されたかったためもう一度履歴書を手渡して面接をしてもらったが結局不採用にされてしまった。この工場は食品加工で大手企業の委託を受け、作業の一部を請け負うというタイプの企業だった。そのためあまり従業員を雇わずにパートタイム中心の職場であったようだ。社員数も10名に満たない中規模な工場であった。またこの工場は地元では有名らしく、よくテレビや新聞でも取り上げられていたらしい。しかし自分が入社する直前に社長が変わり、経営方針が変わってしまったためかその後すぐに倒産してしまったようだ。

自分はその工場でバイトとして採用されたかったのだが、自分はなかなか面接で良い印象を与えることができないので諦めることにした。また会社に対して恨みがあるわけではないので、その工場が潰れたことは残念に思ったが特に何もしなかった。

その後その工場はどうなったのかは分からない。自分はその会社と長く関わっていきたいと思っていたが結局雇われずじまいとなってしまった。その後バイトを応募するたびに、面接で落とされる日々が続いたため、自分は自分の能力を正当に評価してくれる企業で働くことが難しいのだと諦めた。

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