10.学校の中に街がありました
寮の玄関前から続く小径を来た方と違う側に進んで大きな通りに出ると、そこには学院内地図が看板になって立っていた。現在地、と書かれた三角マークの近くは寮が並んで建っていて、今出てきた大通りが学院の正門から続くメインストリート。道の反対側にはショッピングモールがあるそうだ。
え、いや、これ学院内の地図だよな。なんでさも当然のようにショッピングモールって書かれてるんだ。
「明日は今日と同じくキャレ先生のおられる医務室に登校してください。地図でみると、ここですね」
スッと形の良い白い指が指すのは、地図でいう上半分を4つに分けた学院エリアの中で一番寮に近い一角に建てられた建物だ。事務棟と書かれているから、学院の全体運営を司った建物なのだろう。ちなみに、その一角に図書館もあるので、全学年共有なのだと思われる。
学院内は、全体を4つに分けられている。右側3分の1がグラウンドや体育館といった教育機関にありがちな運動施設。その奥に矢印があって、管理森林エリア、とだけ書かれている。
残り3分の2は、まず上下に分けられていて上が学院エリア。学院エリア内は左上が大学院、その右側は中学院、その下が管理棟、残りが初学院。下は右側が寮で左側がショッピングモール。ショッピングモールは学外からも利用可能なようで、駐車場が外側に向けて用意されている。
そのショッピングモールにロベルトさんが案内してくれたわけだが。
「広っ!」
「近隣でも大型のショッピングモールですよ。学内へは配送サービスもありますから、今日は持ち帰ることは考えず必要なものは全て購入してくださいね」
とのことでした。
ショッピングモールの店の配置も、世界が変わっても大して変わらないようで、1階に食品、2階に衣料品、3階に本屋や家具屋、レストランが配置されていた。
そういえば、昼飯食ってないな。今更腹減ったのを自覚した。
自覚ついでに、腹が鳴った。
「ふふ。そういえば食事がまだでしたね。まず食事にしましょうか」
経費で落ちるからなのか、そこに見えているカフェっぽい店ではなく、上階に向かっていく。細かく区切られたテナントが周囲に並んだ吹き抜けのつくりで、吹き抜けの中にエスカレーターが設置されているのも見慣れた光景だ。
ただ、エスカレーターそのものが全然見慣れないものだった。レールがあって胸丈の柵に囲われている斜めに設置された坂、までは同じなのだが。階段が動いているのが地球のエスカレーターとして。
昇降口にあるのは進行方向に向かって矢印が書き込まれた、2人の人間が横並びできる大きさの石板が1枚。上に乗ると、1秒遅れて石板がエスカレーターな速度でレールに沿って上昇していき、降り口で止まった。石板から降りると、やっぱり1秒ほど遅れて下へ沈みこんでいき、元の位置に戻って行く。
「魔法式なんだ……」
「え? あぁ、歩行昇降機ですか。あれは魔法陣で動いているものです。興味がおありでしたら勉強してみてください」
そうか。せっかく大学までの一貫校なんだから、技術分野については初心者向けから専門家向けまで学習環境が整っているわけだ。勉強するにはうってつけの環境だったよ。
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