8.身の振り方が決まりました

 湿布を貼って自己治癒能力に任せる方針だった背中の打ち身にも、治癒術が効く試験結果が出たので問題なく治してもらって、俺の荷物から教科書を見つけた先生とこの世界での俺の学力レベルについて話していると、ようやく迎えがやってきた。

 結果的にこの世界で一番の俺の理解者になった先生も一緒に来てくれて、向かった先は立派なソファセットが設置された応接室だった。


 促されて上座に座らされて、まず真っ先にされたのは、居合わせた大人全員が深々と頭を下げるという謝罪だった。

 ちなみに、ここに問題を起こした教授先生は同席していない。被害者と同席させられないという責任者判断なのだろう。まぁ、この世界に来て当初の言動からも、悪気の欠片も無さそうだしな。賠償的な話をする場では引っ掻き回されそうではある。

 起きた現象や動機等の聞き取りは済ませたようで、分かりやすくまとめて説明されることになった。隣で聞いている第三者な立ち位置の先生が呆れている。


「えーと。この世界は一度超繁栄を果たした後何かの事件で滅んでいて、残されている文献から過去の文明技術として転移魔法を発見して、復活させようとしていたと?」


「その通りだ。検証していたのはマデラ教授といい、わが国でも屈指の魔法師なのだ。魔法陣の起動は魔法師にしかできないため、全ての検証作業は彼の一存に因っており、事前制止が不可能な環境にあった。巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。学術的意義はともかく、君は全面的な被害者であることは、当学院の院長である私の責任でもって保証し、今後の生活の補償も我々で見させていただく」


「元の世界に帰りたい、というのは?」


「申し訳ない。現在転移魔法は遺失魔法となっており、今回成功してしまった異世界からの召喚が唯一の成功例なのだ。古代では我々のこの世界の中では自由に転移できていた痕跡があるが、肝心の魔法陣が見つかっていない。ましてや異世界への転移となればもはや見当がつかないのだ」


 あぁ、やっぱり。まぁ、予想はしてたけどな。ガッカリはする。

 だったら、当面の生活基盤と、この世界で生きていくために必要な情報の入手手段を用意してもらう必要があるな。


「幸い、わが学院は半寮制だ。住居として寮の1室を用意しよう。生活費は君が学院内で学生生活をする期間の費用を毎月一定額支給でこちらで用意する。学費は全額免除するが、教諭同等の月額支給となることは了承願いたい。贅沢三昧とはいかないが一般市民生活には十分な額だと思う。期間は学院を卒業して自立するまでとさせてもらいたい。現在の学力を確認させてもらって、適正な学年への編入手続きをしたい。どうだろうか」


 つまり、当面の生活費と学習環境は用意するから独り立ちして出ていけと。まぁ、妥当かな。俺も、一生の面倒を見てもらうほど厚かましくはないし。

 ひとまず保健室登校で一般常識の勉強から、となりました。キャレ先生が日々の会話相手ができたと喜んでいた。

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