プロローグー新たな伝説


 -ユーデウス歴501年-


 土で作られた簡素な四角い土色の建物と建物の間、路地が広がっている。


 陽はまだ高く、空は明るいはずだが、その路地は建物に囲まれているせいか陰で薄暗く、その上、その日は何故か夕焼けのごとく空が赤く見える日だった。


 その路地で、生温い風と共に、どこからともなく誰かの叫び声、悲鳴、雄叫びが響き渡る。金属と金属がぶつかり合う甲高かんだかい音、何かが落ちたのか、殴られたのか、潰れたのかわからない鈍い音が響く中、黒髪に黒い瞳をもつ少年と、白髪に白髭の無精ひげを生やした明るい柴み色の青いゼニスブルー瞳をもつ老騎士が路地で相対していた。少年も老騎士も、剣を構え睨みあっている。


 そんな音が聞こえる中で黒髪に黒い瞳をもつ少年と、白髪に白髭の無精ひげを生やした明るい柴み色の青い瞳ゼニスブルーをもつ老騎士が路地で相対あいたいしていた。 少年も老騎士も、剣を構え睨みあっている。


少年は、年齢は十五前後だろうか。最低限、身を守るほどの―到底装甲とも、ましては鎧とすら言いようがないほどみすぼらしい―金属でできた歪んだ板と薄汚れたボロボロの服を身にまとっていた。


 ただ、その少年が手に持っている凶器は異質だった。


 その剣は、何度も戦いを繰り広げた痕跡があり、元の形状すらも分からないほどだったが、それが業物であることは一目見てわかるほどの逸品であった。到底、薄汚れた少年が持つような武器ではなかった。

 

 そして、その少年自身も異様であった。

 薄汚れた身なりをしており、錆びた謎の剣を装備している彼は、正直に言えば少女と言っても過言ではないほどに美しく両性的な顔つき。そして、このような場所には似合わぬほどに美しい白い肌であった。

 

 彼の身なりも薄汚れており、錆びた剣を持つ姿は、少女とも言えるほどに美しかった。両性的な顔つきに、白い肌が映えていた。その白さは、病的なものではなく、裕福な人々が持つ環境などによって得られるものとも異なっていた。彼は、生まれつき美しかったのだ。世界を拒否するかのように、美しく・・・・・・いや、むしろ、世界が彼を拒否しているかのように美しかった。


 彼は、剣を構えながら老騎士と睨み合っていた。その静かな路地に、誰かの悲鳴とともに、金属音が響き渡る。少年は、いつでも刃を振るうことができるよう、注意深く老騎士を見据えていた。


 対する老騎士は、薄暗い闇の中、銀色に輝く鎧を身にまとい、周囲には、夜の帳が降りているにもかかわらず、彼の身を取り巻く輝きは一層際立っていた。


 そして、その老騎士が持つ剣もまた、まるで異世界からやって来たような異様な輝きを放っていた。それはまるで、光そのものが物質化したかのような剣だった。黄金色に輝く剣身は、まるで星々が踊る宇宙のように、淡く温かい光を放ち、眩しさはないが、威厳と存在感を持ち合わせていた。


 そして、老騎士自身は、その剣と同じく異質な存在感を放っていた。白髪交じりのやや皺の寄った顔に、白い無精ひげが生えていた。五十半ばほどの年齢だろうか。しかし、彼の肉体はまだまだ全盛期と言っても過言ではなかった。強靭な筋肉は、鎧をすらも隆起させているかのような迫力を持ち合わせ、老騎士の存在感は、周囲を圧倒するようなものだった。


彼は最強と呼ばれる騎士だった。百九十センチ以上もある長身と、隆起した筋肉が鎧を着こむ彼をますます強靭な騎士として見せていた。だが、その彼自身がタラ占めるのは、その経歴であった。数多の戦場をかけた歴戦の勇士、騎士であるということ。今は騎士団を率いる長となり、その経験と成果に基づいた確固たる自信を持っていた。


 だが、彼の片腕がなかった。不覚にも、その腕を目の前の少年に奪われたのだ。老騎士はマントを千切って、少年ににらみを聞かせながら切断された場所をきつく締め上げた。それは簡易的な応急処置に過ぎなかった。


 老騎士はマントを千切ると、少年ににらみを聞かせながら切断された場所をきつく締める。簡易的な応急処置だ。


 老騎士は息を切らせながら、目の前の少年に向き合った。彼は自分よりもずっと小柄で、見た目はまるで普通の子供のようだった。しかし、その手に握られた血が滴る剣は老騎士の腕を切り裂いた証明だった。


「お前は一体誰だ?何故、このようなことをする」


 老騎士は冷静さを装いながら尋問を始めた。

 少年は何も答えず、ただ冷たく老騎士を見据えていた。その瞳には何か異様な輝きがあった。


 そこへ、若い騎士が近づく。


「団長!!」

「近寄るでないぞ!この子はわしが相手する。周りを警戒せよ!」


 最強の騎士が腕を持っていかれた。それだけで彼の優秀な部下達が動揺する程に、有り得ない事実。


 老騎士は部下を近づけないように声を張る。残念ながら目の前の子供を相手にするにはここにいる騎士では犠牲者が出る。


 老騎士は決して油断などしていたわけではない。伊達に最強などと呼ばれてはいないのだ。


 だが、音も気配もなく、一瞬で後ろを取られた老騎士は少年に左腕を切り落とされた。


 何とか利き腕である右腕を左腕で庇い、左腕が切り落とされただけで済んだのは運が良かった、と言えるだろう。


 咄嗟とっさの行動で、最初から狙われていたのが利き腕ではない左腕であったのであれば、おそらく腕ごと胴体は右肩から右脇下まで引き裂かれていたに違いない。


 少年は静かに足を引き、立ち位置を変え、老騎士を睨みつけた。その瞬間、老騎士は何かを感じた。彼は騎士として、危険を感じた瞬間に身体が反応するようになっていた。


 老騎士は、この十五歳ほどの少年と対峙することで、汗をかいていた。彼は、自分が最強と呼ばれるほど多くの戦場で勝利を手にしてきたが、この少年を前にして、彼は動けなくなってしまった。


 少年は隙がなく、戦いに慣れている。あるいは、天賦の才能を持っているのかもしれない。老騎士は、我慢強く待ちながら、この少年を観察し続けた。


 少年は、みすぼらしいボロボロの服を着ていたが、肩や膝、胸など急所には薄い金属の板がついていた。彼が着用しているのは明らかに戦闘服だ。そして、その服の所々には黒いシミがついていた。


老騎士は気付いた。それは、血だ。目の前の少年自身に傷がないことから、その血は彼のものではないとわかった。


しかし、老騎士にとって違和感を覚えたのは、少年が持つ剣だった。その剣は錆び付いていたが、装飾や刃に刻まれた文字が何かを物語っていた。


 名のある名工が作ったと思われる美しい剣。しかし、今では汚れていてその価値を見誤られがちだが、その妙な魅力は誰しもを惹きつける。


老騎士はその剣を見て、手にしたくなる衝動を感じた。自分が使っている剣と同等、それ以上の何かを感じさせる剣。それを目の前にいる少年が使いこなしていることが恐ろしい。


その剣は、大罪人の首を切り落とすための処刑人の剣の形を取っている。戦闘には向かないと思われがちだが、現に目の前にし、扱う者次第であると証明されたばかり。


老騎士は、色々な考えが頭を駆け巡らせた。その剣こそが、彼が探していた名剣ではないかと思った。領域にある名剣の中でも、その剣は特別であった。


数年前、とある国の宝剣が消えた。それが今、老騎士の目の前にある少年が持つ剣かもしれないという疑念が湧き上がった。しかし、すぐに老騎士はその考えを否定する。


「ありえない」とつぶやく。


なぜなら、宝剣には意志がある。剣そのものが生きているように、意思を持っているのだ。そして、宝剣は持ち主を選ぶ。相応しい者にしか扱わせない。それが宝剣たる所以の1つだ。


行方不明の剣は、代々剣神の加護を受ける王家だけが受け継いできた宝剣だ。王族以外に抜けることはないと言われている。そして、宝剣に選ばれた王族が次の王となる。いわば王の選定の剣でもあった。


だから、目の前の少年が持っているのは贋作か、見た目が似ているだけだろうと考えるのが妥当だ。しかし、もしも宝剣が王族以外を選んでしまったとしたら、それは想像を絶することだ。


老騎士は、目の前の剣を見つめながら、色々な考えが頭の中を駆け巡る。その剣が本当に宝剣なのか、そしてもしそうだとしたら、その持ち主は一体誰なのか。彼はその謎を解き明かさなくてはならないだろう。剣を握る手に力が入る。


 老騎士は、目の前の少年が持つ剣の意味と、その少年の過去を考え込んでいた。彼が何人もの人々を殺したか、どれだけの返り血を浴びたか。それは、この荒んだ国で生きるための選択だったに違いない。しかし、老騎士はそれでも、他人の命を奪うことを正当化することができず、そのために自分がこの国に来た理由を思い出した。


――「殲滅」という任務。


 この国はもう救いようがなく、金儲けだけを考えて戦争を続ける国だ。上流階級の者たちだけが潤い、民草は枯れていくばかりだ。苦しむ人々を見ることができない老騎士は、この国を滅ぼすために来たのだった。


 数年前、大国同士の戦争が終わったとはいえ、この国では戦争を起こそうとする暴走政策が続いていた。金と権力を欲する者たちがそのために暴走し、国全体が狂気に侵されていた。


周辺諸国もその危険性に気付き、平和を求める大国が騎士たちを派遣して共同作戦を行った。同盟軍としての騎士たちの使命は、この国を滅ぼすことだった。


平和を掲げる大国が戦争をすることは許されないというのが普通の常識だが、この国に対しては例外的に文句を言われなかった。その理由は、この国の凶暴性と、国力に見合わない軍事力にあった。


この国に侵略されることを恐れた周辺諸国は、一時的に金を支払うことでこの国から襲われないようにし、同時に仮想敵国の国力を削いでいく便利屋として、この国を利用していた。


だが、老騎士はそんな単純なメリットとデメリットの存在を疑っていた。この国の暴走政策が続けば、いつかは周辺諸国も巻き込まれるだろうと。


 その後、案の定、かの国の狂気は更に拍車に掛けて勢いを増し、ついには不可侵条約を結んでいた友好国や周りの国全てに突如として戦争を始めた。騎士達には、武器を持つ者はすべて殺せ、民は救え、ただし、抵抗をする者は問答無用で切り捨てよ、というシンプルな任務が与えられた。


 ただし、抵抗をする者は、問答無用で切り捨てよ。


 その任務内容はシンプルだが、その真意はとても残酷なものだった。民を救えといいながら、邪魔であるならば殺せ。任務を受けた騎士達の多くが唾を飲み込みながら、己の震える体を必死に抑える。彼らは任務以上に大切なものを守るために、自分達の役目を全うしなくてはならない。


 だが、この国に来て、その任務の辛さを、残酷さを本当の意味で知ることになった。


 数え切れないほどの少年兵を切り捨ててきた。

 老騎士が対峙する少年と出会うまでに、騎士たちは、彼らは多くの生命を奪ってきた。それでも、騎士達は必死で耐え忍び、彼らが守るべきものを守り続けた。


 少年の目から見えた世界は、苦痛に満ちた闇であり、老騎士はこの光景を見るのが辛くなった。この国は完全に狂気に取り憑かれ、人々はただ生きるために戦い、生命を奪い合う。


 老騎士は、自分が何をしているのか、何のために戦っているのかを疑問に思った。彼は長い間戦いの中にいたが、これまでの戦いとは異なり、この国に来てから、戦いの意味が失われてしまったようだった。


彼はまた、少年たちがどれほど苦しんでいるのかを理解した。彼らは生きるために戦わなければならなかったが、それによって彼ら自身が殺される可能性もあった。老騎士は、この国の人々が、この絶望的な現実から逃れる方法を見つけることができるかどうかについて、心を重くした。


 しかし、老騎士はその時に、少年の目の前に立っているときに何かを感じた。少年の瞳が、彼に向けられた視線の中に、敵意、殺意以外に人間らしさを見出した。少年たちに与えられた役割が、彼らを人間としての尊厳から奪い去られ、絶望しかないこの世界の中で、瞳の奥にギラリと宿った強い意志。彼は、この絶望的な現実の中で、少年たちが生きるために、何かできることがあるのではないかと思った。



――少年は、荒んだ国で生きるために他人の命を奪わざるを得なかった。しかし、老騎士は、この国を変えるために、自分自身が殺戮を行わなければならなかった。二人は、違う選択を強いられていたが、同じような苦悩と戦っていた――



 老騎士は、もし少年が本当に宝剣の持ち主として選ばれたとしたら、この国に何か、いや、もっと大きな何か、世界が、聖剣の主たちに課せられた何か使命が、激動の時代が来ることを感じていた。そして、その運命を変えるためには、だから、老騎士は無意識に、子供に声をかけていたのだった。



「なぜ剣を握る。なぜ命を奪おうとする。何のために戦っている!」


老騎士は少年に向かって叫んだが、彼の声は虚しく響いた。


「・・・・・・」


少年は、まるで人形のように立ち尽くしていた。老騎士は少年をじっと見つめ、その目には苦悩と絶望が深くにじみ出ていた。


「まさか、理由はないのか・・・・・・いや、分からないのか」


老騎士は、少年の沈黙に苛立ちを覚えながらも、彼に問いかけた。そして、しばらくの間が経過した後、少年はゆっくりと口を開いた。


「・・・・・・違う、それが唯一、生きていく方法だからだ」


彼の声は冷たく、何の感情も表していなかった。老騎士はその答えを聞き、心が張り裂けそうになった。


「それは間違った生き方だ」


老騎士は言い切った。しかし、少年は彼に向かって憤りを滲ませた目で見つめ返してきた。


「間違っている? ふん、そんなことが分かるのか?」


彼の口調は挑発的であり、老騎士をさらに怒らせた。しかし、その目には深い悲しみが宿っていた。


「人は、こんなことをしなくても生きていける」


老騎士は力強く言った。だが、少年は彼の言葉を受け止めようとしなかった。


「・・・・・・そんなことは、俺たちには関係ない」


彼は苦い笑みを浮かべ、老騎士の持つ剣に滴る血を見据えた。


「俺たちには、ただ生き残ることしかできない。仲間を守るため、そして、自分自身を守るために」


彼の言葉には、深い絶望がにじみ出ていた。そして、老騎士はその絶望に心を痛め、自分が果たすべき使命に再び立ち向かう決意を固めた。


「確かに人は争いをやめられない。だが、それは人の本来の生き方ではない!」


 と老騎士は怒鳴った。


「じゃあ、生き方とはなんだ。なんだよ・・・・・・本来の生き方って何だ! 何もかも奪われる! 奪われないためには奪うしかない! お前らを殺す! 俺の仲間を殺すから! お前達も俺を殺す! そうしなければお前達が殺されるからだ! これ以外に何がある!」


 老騎士は少年の言葉に怒りを感じたが、彼の真意にも気付いた。


「それは自分で見つけるしかない」


 老騎士は冷静に答えた。


「じゃあお前はどうだ! さぞ高潔な人生を歩んできたことだろうな!」


 少年はあざ笑った。


「いや、私は高潔などではない。この手はすでに汚れている」


 老騎士は淡々と答えた。


「ならお前が偉そうなこと言うな! 同じような人生を俺よりも長く生きてるお前が!」


 少年は再び怒り出した。




「だからこそ、私はこの手で奪う命の以上を救う」


 老騎士は静かに言った。その瞬間、彼の瞳には黄金色の光が灯った。それは、彼の決意の表れであり、魂の色を表しているかのように、温かく、だが力強い光だった。


 老騎士は、力強い声で言った。「闇に、悪に慣れてはならぬ。悪に染まっていることに違和感を覚えよ。正義を、光を目指すのだ。自分の心に輝く光を。いくら子供とはいえ、君ならわかっておろう。君が進もうとしている先に、光などないことは」


少年は、その言葉に考え込み、眉を寄せた。老騎士は、静かに彼の答えを待っていた。そして、少年は自分の心に輝く光を見つけ、やがて小さくコクリと頷いた。


老騎士は、その決意を見たかのように、淡い光を放つ剣を掲げた。


「我々は、この光を胸に、正義と共に戦う。悪と闘い、命を救うために。それが、我々騎士の使命だ」


その言葉に、部下たちは、一斉に剣を掲げ、決意を示した。


そして、老騎士が持つ剣が放つ淡い光が、少年も、老騎士も、部下たちもいるこの空間を、その温かい光で満たしていた。それは、老騎士の言葉の背中を押すようで、確かにそこには、その瞬間だけが出来ていたのかもしれない。


 そんな老騎士の言葉に、いつのまにか少年も言葉を閉ざし、剣を握る腕を下ろし、静かに聞いていた。


舞台は、老騎士と少年の静かなやりとりに包まれた。老騎士は、剣をしまうと、少年に向けて右手を差し伸べた。不思議そうな顔をした少年は、老騎士の言葉に耳を傾ける。


「私の元に来い。私が、人としての生き方を教えてやる。日常を与えよう」


「日常?」


「そう。争いごとをしないで、平和に暮らせる幸せな日常を。殺し合う必要も、奪い合う必要もない。私は裕福で、君に不自由な生活はさせないと誓う。約束する」


少年は、老騎士の言葉に驚きと疑問を抱きつつ、彼の瞳を見つめる。そして、最後に問いかける。


「信じていいのか?」


老騎士は、優しい笑みを浮かべながら、再度誓いを立てる。


「生きるということは、ただ時間を過ごすだけではない。人生には様々な選択がある。でも、正しい選択というのは、自分で見つけるものだ。君が自分の幸せを見つけるまで、私はが手助けをする。そして、君も自分の力で幸せを掴むことができる。だから、信じてくれ」


少年は、老騎士の言葉に魅了された。その熱い眼差しは、誰もが心を動かされるものだった。


静寂の中、老騎士と少年の約束が交わされた。何かが始まる予感が漂う中、騎士達が息をのむ。


 少年からの殺気は消えていた。彼は、老騎士が自分にとって大切な人になることを感じた。


少年は、老騎士についていくかどうか考えた。彼の中には、まだ熱い殺気があった。戦う理由があった。倒れていった仲間、奪ってきた数多くの命。しかし、彼は自分だけの幸せを、生まれてきた意味を、見つけたいと。そして、忘れていた約束を思い出した。その時、彼は目を閉じて考えた。


やがて、少年は目を開けた。


「いいだろう。じいさんに着いていこう。どの道、この国は・・・・・・お終いだしな」


「賢い選択だな。よし、来い。」


老騎士は、子供を迎えるように微笑んだ。


「ああ、そうだ。君の名前を聞いてなかったな」


「じいさんの名前も、だ」


「そうかそうか。そうだったな。では自己紹介をしよう。これから先、長い付き合いになるだろうからな・・・・・・」


こうして、老騎士と少年は出会うことになった。それは老騎士にとっても、そして少年にとっても、運命の出会いと言えるだろう。


老騎士にとっては大切な子供が、そして少年にとっては偉大な父ができたのだった。彼らは互いに、大切な存在となったのである。



**************

びた剣。

錆びついた剣が少年の手に渡った。偶然の出会いによって、運命が動き出した瞬間であった。

剣は、再び熱を灯し、脈を打ち始める。今か今かと。

さびたるは、めいを隠すため。主人を守るため。

納まるべきさやと主人の強き意思が揃うとき、かみは永き眠りから目覚める。




**************

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