第5話

林ユーコは3年4組だった。

俺とリョーヤは1組で。だから教室を出たあと、俺らのクラスから一番離れたとこまで歩かなきゃいけねぇなと思ったが、大丈夫だった。 


教室を出たら、すぐに。

女子トイレから出てきた後ろ姿を見た。

さらっさらの黒髪ロング。


間違いない。

林ユーコだった。


「林さん、あのさ...」


「これ、手紙...」


俺はそう声をかけて。


彼女に手紙を渡そうとした。


「え、なにこれ...?」


不思議そうな顔をしつつ、彼女は受け取り、

俺の顔を凝視した。


「読んでくれればそれでいいんだ...」


俺はそんな言葉を残して。


1組の教室に戻ろうとした。


その時。


ドォン...!


と誰かにぶつかり、


「うわ...」と

俺は声を上げた。よろめきそうになったとき。リョーヤに右腕をがしりと掴まれ、

バランスをなんとか保った。


リョーヤが心配そうに俺の背後で一部始終を

見ていたらしかった。


「サンキュ」


と小さな声でお礼を言われ、

対して俺は「どういたしまして」と

相槌を打ったんだ。

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