ep.35
久しぶりの更新です。よろしくお願いします
「わぁ、カメが頭の上を通っています! おっきい魚もいますよ!」
二人乗りの乗り物で水中のトンネルの中をゆっくりと進んでいく。魚が真横を泳いでいたり、頭上を通っていたりとまるで海の中にいるようだ。
「この魚… ムニエルとかにしたら美味しそうですね」
隣で魚を見て調理方法を考えている桃華は置いといて、周りを眺めていく。乗り物は10分に一回出発するのでその分並ぶ時間は長かったが周りに人気は無く静かに魚を見ることができる。
「あ、見てください! アザラシがいます! こっちにはペンギンもいますよ!」
「おぉ、向こうにイルカもいるぞ!」
水族館の中も通っていき、ショーが始まるまで待機中のイルカを見ることもできてテンションが上がる。
坂道を上がり、水面から出ていき終点が見えてくる。楽しかった時間もあっという間で、いつの間にかアトラクションが終わる。魚達を見るのに集中していたせいか時間が経つのが早い。
「いやー、いろんな魚を見ることができて面白かったですね! 美味しそうでした!」
「美味しそうかはわかんないけど、確かに面白かったな」
桃華も俺も大満足で正直もう一回乗りたいくらいだが、流石に時間が無いのでやめておく。
「そろそろ昼か。桃華は何か食べたいものあるか?」
「えーとですね、この店に行きましょう。少し食べたいものがあるので」
そう言って指差したのは水族館に付属しているオシャレそうなレストラン。レストランなのに、マップには当店自慢の海鮮ラーメンと写真と共に頭に鉢巻きを巻いた写真が載っている。オシャレなレストランをバックに暑苦しそうな男性が立っている写真は違和感しか感じないが海鮮ラーメンはとても美味しそうだ。
「ラーメンか、良いな。近いしそこにするか」
「よし!それじゃあ、食べにいきましょー」
こうして、昼食を食べることになった。
────────────────
「らっしゃっせー!」
店の中へ入ると厨房から勢いのある声が聞こえてくる。レストランで出す声じゃないだろ、と思いつつもタンクトップの店員さんに連れられ空いている席に座る。
「それでは、ご注文が決まりましたら、お呼びください」
見た目と違い落ち着いた声で喋る店員さんがそういって厨房へと戻っていく。メニュー表を見るとラーメンからイタリアンまで幅広く種類があり、どれも美味しそうな写真が付いている。
「宇津さんは食べたいものもう決まりましたか?」
「ん、ああ、海鮮ラーメンにするよ。桃華は何を食べるんだ?」
「私も海鮮ラーメンですよ」
桃華もやはり写真に惹かれたのだろう、海鮮ラーメンを頼むようだ。店員さんを呼び注文していく。
「えっと、海鮮ラーメン二つで」
「あ、私の方は超盛盛盛海鮮増し増しでお願いします」
「承知いたしました。それではお待ちください」
桃華の言葉を聞いても何事も無かったように戻っていく店員さん。俺の頭の中は謎の呪文を聞いたせいで?が浮かんでいる。
「……えーっと、さっきの超盛、なんとかって奴は何だ? そんなのメニューに書いてあったけ?」
「いや、あれはメニュー表には書いてませんよ。裏メニューってやつです。これを食べるためにこの店にきたんです!」
「そんなのどうやって知ったんだよ…」
「秘密です♪」
裏メニューなんてこのレストランにあったのか。だけど、さっきの言葉を聞く限り普通の場合よりも多そうだが桃華は食べきることができるんだろうか。まぁ最悪俺が食べきれば問題は無いだろうが。
そんな風に考えていると、あっという間に俺と桃華の分の海鮮ラーメンが届く。
俺の海鮮ラーメンは麺の上に海老や蟹、魚のフライが乗っていて、スープからは魚介から出汁をとったであろう匂いがしてとても美味しそうだ。
それと比べて桃華の物は麺の量も凄いが、それよりもその上に載っているフライや海老、蟹の量がヤバい。タワーのようになっていて、美味しそうというよりも、見ているだけで胸やけがしてくる。
「わぁ!美味しそうですね!」
それなのに、歓喜の声を上げている桃華は何というか……凄い。いただきますといって、一番上から少しづつ手を付けていき美味しそうに食べている。傍には店員さんがストップウォッチを持って時間を測っている…… ってもしかして、これって大食い用のメニューなのか。
桃華の食べている姿を横目に俺もゆっくりと食べ始める。見た目以上の美味しさで、俺が食べた魚介ラーメンの中で一番美味しいくらいだ。下にはアサリが入っていてこちらも良い出汁が取れている。
「ごちそうさまでした~」
「っ…… 時間っ、17分32秒! 新記録です!」
俺が心の中で食レポをしていると桃華の緩い声と店員さんの迫真の声が同時に聞こえてくる。それと同時にいつの間にかテーブルの周りを囲んでいた鉢巻きを巻いたオジサン達が静かに拍手し始める。
「おめでとうございます。ルール通りに値段は無料、次回の5000円分のギフト券、それと新記録樹立の証書となります」
拍手が止み、オジサンの群れからひと際暑苦しそうなオジサンが出てきて、そう言って桃華に渡す。桃華も「ありがとうございます!」と元気に返事をするとオジサン達も微笑ましそうに微笑んで散っていく。
「いやー、美味しかったですね!」
「お、おう」
ラーメンを食べ終わり、会計を済ませて店を出る。どうやらあの大食いメニューは失敗すると3000円を払うことになっていたらしい。事前にそういうことは言って欲しかったが、絶対に食べきれるという自信があったようで言わなかったらしい。
あんなメニューを食べた後でも物欲しそうにして売店を見ている桃華を見て、やっぱり桃華は色々と規格外だな、と思うのだった。
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