ep.36

 

「いやー、楽しかったですね!」


 昼食を食べ終わった後、桃華と共にアトラクションを数個周ると日が暮れて時間だ。

 桃華も楽しんでいたようだし、俺も久しぶりに遊園地に来たので全てが新鮮で面白かった。


「日が暮れるまで、もう一回くらい乗れそうだけど何か乗りたいのあるか?」


「そうですねー、…やっぱり最後なので、観覧車に乗りましょう!」


「観覧車か、じゃあ向こうだな」


 この時間だと丁度一番上に昇る頃には夕日が綺麗に見えそうだ。



「足元にお気をつけてお乗りください」

 

 小さな室内へ入っていくと、ゆっくりと観覧車が昇っていき、遊園地全体が徐々に見えてくる。


「うわぁ、あそこみて下さい!さっき乗ってたやつが小さくなっていきます!」


「おー、向こうに昼食を食べたレストランもあるぞ! あっちにはお化け屋敷も見えるな」


 さっき乗ったばかりのアトラクションや、時間が無くて行くことができなかったエリアが夕日に照らされている。そして、この遊園地は海に隣接していたようで夕日が水平線にゆっくりと落ちていき、遊園地全体が朱色に染まっていく。


「……全部が夕日で染まっていって、綺麗ですね」


「…あぁ、綺麗だな」


 丁度観覧車が頂上に昇ると、夕日が沈みかけ、海が光を反射して一本の道のように輝き、非日常の美しい景色を前に俺も桃華も心を奪われる。


「…改めて、今日はありがとうございました。……初めてで、はしゃいじゃって迷惑をかけたかもしれないけど、宇津さんと二人で来ることができて、楽しかったです」


「…別に迷惑なんて思って無いよ。それに俺も桃華と一緒に来れて楽しかったし。こっちこそ一緒に来てくれてありがとな」


 お礼を言い合っているのが可笑しくなってふふっ、と笑う。


「また、どこか一緒に出かけるか」


「そうですね、…次は日帰りじゃなくて泊まったりもしたいです。」


「…温泉とかに旅行するのもいいな」


「いいですね、それじゃあ、また予定立てないといけませんね」


 もう次のことを考え始めている桃華を見て笑う。今日はこれで終わってしまうのか、と一人寂しくなっていたが、次の予定を立て始めている桃華を見ていると寂しさが薄れていく。

 

 桃華との約束に今から思いを馳せる。次は沙奈や村田も連れてみんなで行くのもいいかもしれない。まぁ、村田が暴走しそうなメンバーなのでそれだけが不安だが。


「宇津さーん。聞いてましたか?」


「あぁ、ごめん聞いてなかった。…てか、流石に今から予定を立てるのは早すぎじゃないか?」


「早くないですよ! 何事もスピードが大切なんですから」


 話していると観覧車が丁度一周回り終えた様で入り口が開く。


 暖かい室内から外へ出たことで火照った体を冷たい風が冷ましてくれる。

 街灯が明るく照らしている中、人の減った遊園地を歩く。


「次は沙奈さんも宇津さんのお友達も一緒に来れたらいいですね」


「あぁ、今度はみんなで一緒に来たいな」


 


 


 


 感想・レビュー・評価お待ちしております


 

『メスガキ先輩とオスガキ君』

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428714765433


 新しく書き始めました。息抜きにノリと勢いで書いていきますので、気になったら読んでいただけると泣いて喜びます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る