ep.28
(十時丁度…… 怒られそうだな)
ゴールデンウィークということもあって駅前は人で溢れている。やけに周囲から見られている気がするが、橘さんを探しに人混みをかき分け待ち合わせ場所へと向かうと茶髪の見覚えのある美少女がチャラそうな男に絡まれている。
(…おいおいマジかよ、この辺の治安は良いと思ってたんだけどな……)
「お姉ちゃん、めっちゃ可愛いじゃん!休日に一人もなんだし、俺と遊ぼうよ」
まさか、こんなところでナンパの定番誘い文句を聞けるとはと地味に感動だ。そんな気持ちを抑えて元々絡まれているのは俺が遅れてしまったせいなので助けに向かう。
「おーい、ごめん!待ったk───」
「あなたみたいな不細工な人には興味はないのですが… 人を待っているのでどこかに行ってもらえますか」
「…お、おい!可愛いからって調子乗ってんじゃ───」
「どこかにいってもらえますか」
「…チッ」
橘さんから物凄い圧を感じる。俺が助けに行く必要もなくナンパ男は橘さんの圧に負け舌打ちをして去っていく。校内では天使なんて言われているがまさかこんな一面があったとは驚きだ。
「ごめん、少し遅れた。だけど、あんなあっさり追い払うなんて流石だな」
「…はぁ、またナンパですか。…少し顔が良いからって────って宇津くん!?」
「ん?何か変なところあるか?」
橘さんが驚くほど変な恰好だったのか… 俺の洋服センスは絶望的なのかもしれないと不安になる。
「…い、いや、変なところは無いよ。ただ、………カッコ良すぎでしょ」
「…ただ、何だ?」
「……何でもない。早く行こう、宇津くん!」
「お、おう。電車もそろそろ来るだろうしな」
まだ、の続きが気になるが早めに行かないと橘さんに置いて行かれそうだ。
その後、橘さんを追いかけると「宇津くんが遅れたせいであんな男に絡まれた」と電車の中でぐちぐち言われた。
────────────────────────────
電車に揺られること数十分、やってきたのは隣の隣街の大型ショッピングモール。駅前以上に人が混んでいて橘さんを見失ってしまうのに気を付けながら歩く。
数件洋服店を回り、橘さんの服を見ていく。服についてよくわからない俺でもセンスが良く、着ている人が美少女なこともあってか全てが綺麗に見える。
それでも、橘さんが満足するほどでもないのか難しい顔をして買わずに店を出る。
「…そろそろ、飯食べに行かないか?」
「そうだね、昼も近いし食べよっか」
そう言って買い物を一旦切り上げて昼食を食べに行く。ここはうちの近所とは違い飲食店が入っているので洋食から和食まで選り取り見取りだ。
「橘さんは何か食べたいのある? 」
「えーと、今朝は和食だったから… パスタかな 」
「おっけー、パスタね」
丁度昼食の時間ということもあり混んでいて席が空いていないことを覚悟したが、運よく空席があり席に着いてたらこパスタとカルボナーラを頼む。
「…橘さんさっきの服全部可愛かったのに何で一着も買わなかったんだ?」
「か、可愛かった…… って、そんなに買えるわけないでしょ。お金と相談しなくちゃならないし」
「それでも、一着くらいは買ってもよかったんじゃないか?」
「それなら、宇津くんが選んでよ。……私も好きな人の好みの服装に合わせたいからさ」
そう言って顔を赤くさせ俯く橘さん。恥ずかしいなら言わなければいいのにとは思うのだが好意を向けられている者としては無下にはできない。
「…分かったよ。このままじゃ荷物持ちとしての仕事を全うできなさそうだからな」
「それなら、ガンガン選ばせるからね!」
午後からは大変になりそうだなと思いながら運ばれてきたパスタを食べた。
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