ep.27



 沙奈:じゃあ、明日の十時に駅前集合ね


 宇津:わかった、おやすみ


 沙奈:おやすみ~



 スマホを机に置きクローゼットの前に立つ。時間は11時を過ぎ、予め明日着る服を見繕っていく。まぁ、外出用の服なんてほんの数着ぐらいしか持っていないのですぐに終わってしまうのだが。

 寝坊対策としてバッグの中に必要な物を詰めておき、ベッドに転がる。電気を消し目を瞑ると意識はすぐに落ちていった。




 ────────────────────────────


 アラームが鳴っているのを眠気に抗いながら腕をのばして止める。ベッドから出ると寝起きの体に冷たい空気があたり呻く。

 下へ降りると既に桃華は起きていて朝食の支度をしている。


「あ、宇津さん。おはようございます」


「…ん、おはよう」


 いつものように桃華に「顔を洗ってきてください」と言われながら洗面台に向かい顔を洗うと冷たい水が眠気を飛ばしてくれる。身だしなみを整えてリビングへ戻ると

 丁度朝食ができたようで桃華がちょうど机に並べている。並べるのを手伝い席に着き、桃華と食べ始める。


「今日は、確か沙奈さんと出かける日でしたよね」


「あぁ、10時に駅前集合だからご飯食べて少ししたら出るよ」


 なんだかんだで休日は基本桃華と一緒に過ごしていたので桃華にとって初めて自由に過ごせる日だろう。男の俺がいると出来なかった事もあるだろうし満喫してほしいと思う。

 

 昨晩用意した服を着て出かける準備をする。時間までもう少しはあるので少しゆっくりしていると桃華も家事が終わらせたようでソファに座る。

 しばらくテレビを眺めていると桃華がチラチラとこちらを見ている。もしかして服のセンスがダサすぎたりするのだろうか…


「…何か、変か…?」


「えっ、いや… 恰好は良いんですけど髪の毛はいじらないんですか?」


「いじってもいいんだけど… 髪の毛にワックスとか塗った事ないんだよな… 」


「じゃあ、私が塗りましょうか?」


「え、いいのか?」


「はい!ワックスを塗れば、宇津さんがもっとカッコよくなるって私の勘が言ってるんです!」


 今までにワックスを塗ったのは過去に親父に一度塗ってもらった時のみ。正直持て余していたので使ってくれるのはありがたい。もっとカッコよくなるってのはよく分からないが…

 

 使われずに奥の方にしまってあったワックスを持ってくる。


「わぁ、ふさふさですね!」


「この年で髪の毛がふさふさじゃなかったら困るだろ…」


 ここ数か月全く髪を切っていなかったので髪は目を少し隠すほど伸びてしまっている。そのうち切ろうとは思っていたが最近忙しすぎて忘れてしまっていた。

 

「よし、あと後ろをいじって終わりますよ」


「なんか、人の髪の毛いじるのに慣れてるな」


「学校で結構手伝ってましたから。…はい、終わりです!こっちむいてください」


 そう言われて桃華の方を向く。目にかかっていた髪の毛が無くなったことでいつもよりも桃華の顔がはっきりと見える。やっぱり美少女だよな、と改めて思っていると桃華が感嘆の声を漏らして静止している。


「おーい、桃華ー。大丈夫かー」


「……ハッ、まさかここまで変わるとは…」


「えーと、大丈夫か?」


 桃華が何かを言っているがよく聞こえない。桃華のことだし上手くワックスつけれて自分の才能に驚いているとかだろう。


「…それで、どうだ?特におかしくないよな?」


「…大丈夫ですよ、これまでやった中で一番の出来ですから! そんな事より早くしないと遅れちゃいますよ」


 桃華にそう言われて時計を見る。いつの間にか時間が経っていたようでそろそろ出ないと不味い。ワックスを付けてどうなったのか気になるが、桃華が大丈夫と言っていることだし大丈夫なのだろう。

 

 荷物を持ち、桃華に「楽しんできてくださいね」と言われながら家を出た。


 


 



 感想・レビュー・評価お待ちしております

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る