ep.8
時計を見ると8時を差している。
(今日は、昼から桃華と買い物か)
顔を洗って身だしなみを整えてから、リビングへと向かうと先ほど部屋から勢いよく出ていった桃華がソファの上でクッションに顔を埋めていた。
「……えーっと、桃華…?」
声をかけると、体をビクッと震わせ恐る恐るこちらを向く。別に怒ってるわけじゃないんだけどな…… と思っていると、桃華から謝られてしまう。
「…… ごめん、なさい」
「別に怒ってるわけじゃないから大丈夫だよ。……それに、まぁ、少し嬉しかったし。」
「……本当ですか?」
「本当だよ。…でも、起きてすぐに隣にいるのは驚くからやめてほしいかな」
俺が苦笑いしながらそう言うと、安心したのか「わかりました!」と言ってソファから立ち上がり朝食を用意するためにキッチンへと歩いていく。
「でも、宇津さんも私が毛布から出ようとしたら、急に抱きしめてきたんですよ?」
食器を用意していると突然そんなことが言われる。まさか、自分が桃華を抱きしめていたなんて思わず、狼狽える。寝ぼけてたとはいえ、女の子に抱きつくのヤバい、そう思って急いで桃華に謝る。
「本当にごめん!まさか、自分がそんなことしてたなんて……」
もしかしたら、嫌われてるかも… とうなだれる。その様子を見て桃華はふふっと笑って
「大丈夫ですよ。私も、やってしまいましたしこれでお相子ですね。……早くご飯たべて買い物に行く準備をしましょう!」
と言って許してくれる。俺もこれからは気を付けないとと気を引き締めて朝食を食べ始める。
────────────────────────────
二人で出かける前に家事を終わらせてしまうと、時間は昼前。そろそろ行くかと桃華に声をかけ近所のショッピングモールへと向かう。
ショッピングモールは週末ということもあり結構混んでおり、桃華は初めて人混みをみて眼を輝かせている。
まず最初に昼食を食べるため、フードコートへと向かう。昼時なのでほとんどの席が埋まっていて、やっとの思いで見つけた席に座り何か食べたいものある?と桃華に聞く。
「えっと、……たこ焼きたべたいです!」
どうやら、この前にたこ焼きをテレビで見てから、ずっと食べたかったらしい。桃華には少し待っていてもらって、たこ焼きを買いに行く。少し並んではいたが、すぐに自分の番が回ってきて、普通のものと、具がエビになっているものを一個ずつ買って桃華のもとへと戻る。
焼きたてのたこ焼きは、外はカリカリ、中はふわふわでソースと鰹節がよく合っていてとてもおいしい。桃華も笑顔で舌鼓をうっていたが、すぐに食べ終わってしまったようで、俺の食べているエビ焼き?を物欲しそうにじっと見つめている。
その様子に微笑ましく思いながら、桃華もこれ、食べるか?と聞くと、いいんですか!頭についている猫耳をピクピクと動かしながら嬉しそうにしている。
3個ほど分けてあげると、ありがとうございますっと言って美味しそうにすぐに平らげてしまう。
「ふぅ、美味しかったぁ…」
そう言って、満足そうに眼を細めている桃華。二人で少しの間ゆっくりした後に桃華の服を買いに向かう。
「じゃあ、ここで待ってるから。選び終わったら教えてね」
そう声をかけて、近くにある椅子に座って待とうとすると桃華に呼び止められる。どうやら、服を見てほしいらしい。正直、服のコーデなんかは全然わからないぞ、と言うと良いか、悪いか言うだけでいいですからと言われて桃華の後へついていく。
ついていくと、少し待っていてくださいと言われて、言われた通りにしていると数枚の服を持って桃華が現れる。
「今から、この服を着るので、宇津さんは良いか悪いかの判断お願いします!」
そう言って、備え付けの更衣室へそそくさと入っていった。
ガラガラとカーテンが開かれる。ブラウン系のオールインワンに中に黒色のトップスを着た桃華が中から出てくる。
「……どうでしょうか?」
と心配そうに桃華が聞いてくる。正直似合っているとしか言いようがない。顔も整っていて、スタイルのいい桃華は何を着ても似合う。そう思いながら
「あ~、うん。めっちゃ似合ってる」
と答えると、心配そうな表情が消え嬉しそうにしながら次のやつ着てきますね、と言って再び更衣室に入っていく。
そんなことを数回繰り返すと、結局選んだ服を全部買うことになってしまった。
大人っぽい服も、可愛い服もすべて似合っているので、正直こうなるだろうなとは予想していたがこれ程までとは思わなかった。
お金の方は国から援助されている分を使っているのでまだまだ余裕がある。隣にいる桃華は好きな洋服を買えたからか、心なしかスキップ気味になっている。
その後、桃華の下着なども買い、家具の売っているコーナーへと向かっていった。
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