ep.7
週末も終わり、今日からまた新しい一週間が始まる。
「行ってきまーす」
そう言って玄関の扉を開けると、つい最近まで誰もいなかった家の中から一昨日新しい同居人となった桃華が「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる。
誰かが送り出してくれる、という久しぶりの行為に懐かしさと新鮮味を感じながら学校へと向かう。
学校では特にこれといったことはなく、流れるように日付は進み、桃華と出会ってから2回目の週末が始まった。
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今日は私の部屋の家具と私の服を買いに行く日。アラームの音が聞こえて毛布の中から腕だけを伸ばしてアラームを止める。昨夜は興奮してなかなか寝つけなかったせいか、眠くてベットから出たくない。10分ほど睡魔と格闘すると、意を決してベットから起き、眠気を覚ますために顔を洗う。
時間は6時半を差していて、私は朝食を作るために台所に立つ。約一週間も立つと台所私の敷地も同然で何がどこにおいてあるかがすぐに分かる。ぱぱっと朝食を作り終えると、宇津さんを起こしに部屋にいく。
どうやら、昨日は寝るのが遅かったようで、今も宇津さんはベットで熟睡している。
(眠った時の顔は、あどけなくて可愛いなぁ)
そんなことを思っていると、びびっと体に電流がはしったかのように、天啓が私に降りてくる。
(そうだ…… 今なら、隣で寝てもバレないんじゃ…)
思い立ったが吉日と、すぐに行動に移す。バレなきゃ、大丈夫と心で何度も呟きながら宇津さんのいるベットにそーっと入っていく。
全身が入ると、隣からは宇津さんの温もりを感じる。匂いをかぐと宇津さんの匂いがして、まるで全身を包み込まれた気分になる。興奮と背徳感で身体中が熱を持つのを感じる。
(…そろそろ、出ようかな……)
そう思って、慎重に毛布の中から出ようとすると、突然後ろから抱きしめられて引き寄せられる。
突然の出来事にびっくりして、そっと後ろを振り向くと宇津さんが私の背中に顔を埋めている。
(えっ… あれ…… 宇津… さん?)
恥ずかしすぎて、体中が熱い。今、自分の顔見たらどうしたの?と心配されるぐらいには顔が赤くなっているのが分かる。驚きと幸せで、うまく思考ができない。
あまり、強くは抱きしめられてはおらず、すぐに腕はほどくことができそうだが、頭の中ではこのままでもいいんじゃないの?なんて考えてしまって行動に移すことができない。
そんな風に30分ほど、宇津さんの腕の中で幸せに浸っていると、どうやら起き始めるらしい。
自分の今の状況を思い出す。宇津さんの毛布の中に入り、宇津さんに抱きしめられて頬が緩んでいる私。
(ダメだ… 怪しすぎるよ、私!)
私を抱きしめている腕が緩むのを感じる。どうやら宇津さんが起きたみたいだ。
「……桃華?」
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目を覚ますと、目の前に誰かがいる。ぼやけた目を擦り、よく見ると、藍色の毛の猫耳がついている。
「……桃華?」
俺がそう声をかけると、わなわなと震えながら顔を赤くしてこちらを向く。
「い、いや… 最初は出来心だったんですっ!……ごめんなさいっ!」
そう言うと、涙目で急いで部屋からでていく。あまりにも突然すぎて、頭が追い付いてこない。
でも、一つだけ、起きた時に隣に女の子がいるのは心臓に悪いのでやめてほしいと思った。
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