第10話
「おお、お許しくだされ、アン・・・いや、アン殿」
国王様が膝をついて頭を下げます。
「おっ、おやめください。国王様」
私は国王様にかけより、立っていただくように促します。
「おい、ローカス、お前も謝るんだっ」
国王様に言われて、ローカス王子は国王の隣で同じように膝をついた。
「申し訳ない・・・」
「馬鹿者っ!!しっかりと謝らんかっ!! ・・・本当に申し訳ない。アン殿。これは私の不徳の致すところでした」
「申し訳・・・ございませんでした・・・っ」
お二人はお謝りになられました。
「わかりました。許しますので、顔をお上げください」
私がそう声を掛けると、嬉しそうに国王様は顔を上げました。瞳には薄っすら涙を浮かべておりました。
しかし、周りの貴族たちは納得していない顔の方もちらほらいらっしゃいました。そんな方々の目がこう言っています。
『ローカス王子は死刑だ』
(うーん・・・どう治めるのがよろしいでしょうか)
私は悩みました。
貴族で同じような事件があった場合では、死刑もしくはそれに準ずる体罰・・・。相手が赦した場合でも、平民落ちをすることが多いです。ローカス王子が開いたパーティーでそんな目をする貴族の方々がいるということは、街の人々が聞いたら、クーデターが起きてしまうかもしれません。
みんなのためであれば、そうするべきかもしれません。しかしながら、ローカス王子の散財でこの国の財政状況はそこまでよくなく、クーデターが起きてしまえば、他国から難癖をつけられて攻め込まれる恐れもあります。そう考えると、王族でそういった不貞行為があった場合、私が知らないだけで闇に葬られていたのかもしれません。ただ、私とローカス王子だけで話をしていたわけではなく、こんな太陽の下、公衆の面前で明らかになった罪は償わなければ、法が乱れます。
国王様は大分ご高齢です。
高齢になって授かった一人息子のローカス王子。
彼がいなくなってしまえば、どうなることやら。
この国も一枚岩ではないみたいなので、睨んでいる貴族の方々のうちには王家を狙っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
「アン殿」
「あっ、はい」
国王様が跪きながら私に声を掛けるので、立ち上がっていただくように促し、ようやく国王様が立ち上がってくださいました。
「私の養子に入ってはくださらぬか?」
「はい?」
「おお、それはいい」
「それなら安心ですわ」
周りの貴族たちが満面の笑みで拍手が沸き起こりました。
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