第9話

「お前が仕組んだんじゃないだろうな・・・?」


 ローカス王子がクリスくんを睨みます。

 周りの方々も、恐怖して何も言えない顔になりました。


「そんなわけないです」


 きっぱり言うクリスくん。

 私は彼とは会ったばかり。

 でも、彼の振る舞いやさっきのリリスとのやりとりを見ていれば、そんなことをするはずはない。


(血迷っているのかしら・・・それとも・・・)


 クリスくんに罪を被せようとしてるのか?


 私は嫌な予感がよぎりました。

 けれど、クリスくんは平然としています。

 

「なんの騒ぎだ?」


 この国に住んでいるのであれば、誰もが知っている男性の声がしました。

 ある預言者が海を割ったなんてことを聞いたことがありますけれど、それに似たように、みんながその人のために道を開けました。


 そうです、王です。こんなことができるのは国王様しかおりません。

 ローカス王子の父君。

 聡明で私たち国民を導いている国王様です。

 国王様を前に、みんなは頭を下げ、喧嘩しそうだったクリスくんとローカス王子も同じです。


「ローカス、どういうことだ」


「父上・・・」


「今日は大事な話があるからと来てみれば・・・」


「実は・・・その・・・」


 歯切れが悪いローカス王子。

 まぁ、当然ですわ。


「おぉ、アン。この状況を教えてくれないか」


 訝し気な顔をしていた国王様ですが、私と目が合うとホッとした顔をされました。どうやら、この状況を私が説明しなればならないようです。ちらっと、ローカス王子を見ますが、下を向いて何かを言うつもりは無いようです。


「はい、お応え申し上げます。先ほど、ローカス様から大事な話があると宣言がありまして、その内容がローカス様が私と婚約破棄をされたいという内容でございました」


「なんとっ!!婚約破棄!!?」


 国王様は唖然とした顔でローカス王子を見ますが、ローカス王子は顔を上げません。


「理由としては、私があちらのクリス氏と不貞行為をしたとのことです。しかし、私には全く身に覚えがありません」


「そうであろう、そうであろう。アンほど良識がある御方がそんなことをするはずがない」


 そこまで、国王様に言っていただき私はお辞儀をします。


「ありがとうございます・・・それで、その証言をされたリリス氏とロディ氏は今衛兵に連れていかれたところです。そして・・・」


「どうされました?アン」


 別に平気だと思っていたけれど、ちょっと言いずらくて言葉が詰まってしまいました。

 私は大丈夫。けれど、国王様が自分の息子が不貞行為を働いたと知ったら、ショックを受けるのではないかと思うと心が少し痛んだ。


「ローカス様がそのリリスと言う女性と不貞行為がありました」


 あぁ、言ってしまいました。

 国王様の顔から血の気が引いて行きます。

 罪なき人をこんな風にさせるなんて、心苦しいです。

 

 あなたは、ちゃんと反省していますか?

 ローカス王子。

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