第8話

『そうだ、ロディお前が悪い!!俺は騙されただけだっ!!』


 ・・・とローカス王子が言うと思ったのですが、よほどショックだったみたいですね。悩んだ顔をされて、いっぱいいっぱいのようです。


「ロディさん、良かったじゃない。愛する人と一緒に棒打ちだなんて・・・」


「はああああああっ!!!?」


 私がリリスを見ながらそう告げると、甲高い声でリリスが叫んだ。


「・・・リリス。なぁ・・・」


「あんたのせいよっ!!あんたの演技が下手だからこんなことになっちゃったじゃない!!」


 これは・・・化けの皮が剥がれたと言っていいのでしょうか。

 先ほどまで、小動物のようにおどおどしていたリリスが吼えだしました。

 ワンちゃんのケルベルちゃんがそれを見て、臨戦態勢に入ってます。


「・・・リリス、落ち着いてくれ。俺たちはあの夜に愛し・・・」


「黙れよ、お前っ!!!」


 リリスが彼女よりも身長が高いロディの口を鷲掴みにして突き倒す。あらあら、リリスさんは力持ちさんでしたのね。自分の世界に入り込んでいたローカス王子も信じられないような顔で二人をご覧になってますね。


「ねぇ・・・違うの・・・クリス」


(ええっ!!)


 リリスはローカス王子に弁明に行くのかと思いましたら、なんと私の隣にいるクリスくんのところへ来ました。でも、クリスくんは彼女と目すら合わせるのが嫌みたいで、そっぽを向きました。


 ギロッ


 クリスくんの目を盗んで、私を睨んでくるリリス。挨拶代わりにそんな八つ当たりで睨まれても困ってしまいます。


「そういうところだよ、リリス」


 寂しげな顔でクリスくんがリリスを見ていました。


「クリス!」


 温度差というのがわからないのでしょうか。リリスはクリスくんに見られただけでとても幸せそうな顔をしています。周りのみんなも、ロディもローカス王子もドン引きしているのなんか目に入らないようでした。


「早くその女を捕まえてっ!!」


「そうよ、衛兵は何をしているのっ!!」


 周りの方々がリリスを指さし、叫ぶとみんながざわつき始め、防具を着た人が走る音が遠くから聞こえてきました。二人の衛兵は王子に指示を仰ぐように彼を見て、直立しました。


「連れていけ・・・っ」


「「はっ」」


 敬礼した衛兵たちはリリスとロディをそれぞれ捕まえてました。


「はっ、放せっ」


 ロディは抵抗しましたが、衛兵は簡単にロディの腕を後ろに回して、大人しくさせました。


「クリスっ、クリスっ。ちょっと・・・っ、放してよっ!!放して!!!」


 リリスも抵抗しました。ロディよりも小柄にも関わらず、大暴れするので衛兵が大変そうでしたが、なんとか引きずっていきました。


(これで、雑事は一応解決しましたわ。さて・・・)


「おい、お前・・・」


 あらあら、先ほどまで沈んでいたローカス王子がクリスくんを睨んでいます。


「なんでしょうか、ローカス王子」


 クリスくんも毅然とした態度ですが、これは・・・まだまだ波乱がありそうですね・・・。



 

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