第7話

「ほんとうか・・・?アン」


 私がさらにロディに反撃をしようと思っていましたら、ローカス王子が珍しく落ち込んだ雰囲気で私に尋ねてきました。いつも自信満々なローカス王子がそんな態度を取るなんて少しびっくりです。


「えぇ、神に誓いますわ。ローカス王子。だって・・・婚約中でしたもの」


 私は言ってやりました。

 って、そんな大それたことではございませんね。

 ただの、当たり前のこと・・・それだけですわ。


 あぁ、珍しく凹んでいるローカス王子。きっと謝ることはしないでしょうけれど、ようやく理解していただいたようですわ。ずーっと、こちらを見つめています。すると、なんでしょうね、この気持ち・・・うん。


「でも・・・婚約は破棄されてしまいましたけどね」


 皮肉・・・というよりは、負け惜しみ。

 負け惜しみというよりは、事実を申し上げただけかしら。


 怒りが熱を帯びるとしたら、そうですね・・・私は今、少しだけ肌寒く感じました。


「僕だって、神に誓います。高貴なお方であるアン様に・・・僕が・・・そんな・・・」


 クリスくんは照れて、真っ赤になっています。

 周りの女性はそれを見て、うっとりした表情を浮かべていますね。

 

 気持ちはすごいわかります。

 見た目のかわいさに反して中身は理知的。

 しっかりしている部分があるのに、恋愛に関してはこんなにも初心。

 初心でいても、好きな子をイジメる男の子のようではなく、ちゃんとレディーへの気遣いができる優しさ。

 思春期の大人と子どもの間を行き来して、こんなにギャップがあるクリスくんは母性本能をくすぐりますわ。

 

「そうか・・・」


 あぁ、ローカス王子が返事を下さいました。

 ローカス王子は、小さい頃は好きな子をイジメたタイプかもしれませんね。

 でも、私たちはもう大人と言われる年齢です。だから、婚約も致しましたし、不貞の責任は取っていただかなければなりません。でも、それより先に。


「ロディさん」


「ぬぁ!?」


「ローカス王子に虚偽の報告・・・それも、誰かが処罰されるような報告は棒打ち100回」


「いえいえ、アン様。アン様はローカス王子の婚約者でした。それもアン様の純潔を汚すような行為・・・死罪が妥当です」


 クリスくんが再び後押ししてくれます。

 でも、ローカス王子も浮気をしていたようですし、婚約破棄はそのまま受け付けようと思っているので、お気持ちは嬉しいですが、棒打ち100回で私は構いませんよ。それにロディが耐えられるような気概があるように感じませんし。


 今度は腕を引っ込めるのではなくて、血の気を引いていらっしゃるのですか?

 でも、無駄ですよ。

 軽はずみな行為であなたは全てを失うのだから。







 




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