第6話

「不貞はこの国の最も重い罪の一つ。それは御存じですよね、ローカス様」


 私はローカス王子に確認します。


「あぁ、もちろんだ。だから・・・」


 私は手で、ローカス王子の次の言葉を制す。


「国家の主である王族もまた、そのルールには逆らえないですよね」


「・・・」


「あらあら、なぜ黙るのです?」


 私が今しているのは、もしかしたら悪役令嬢かもしれませんね。

 でも、正当防衛なんです。お許しくださいませ。


「もし。そのリリスと関係を持たれてはおりませんか?」


「・・・っ」


 ローカス王子はたじろいました。

 リリスが彼の服を引っ張っても、彼は何も言いませんでした。


「残念でしたね、リリス」


 私はリリスを見るけれど、彼女は私を見ないで、服を何度も引っ張る。


「ローカス王子はお馬鹿さんで騙されやすいですけれど、嘘をつくことができない人ですから。そこがそのお方の・・・一番いいところですから」


 形成逆転です、リリス。

 総勢160人の皆さんは私の味方になりました。


「でも、お前がクリストファーと寝たことには変わりがないだろっ!!?」


 ロディという男が私を指さします。

 

「1つ」


「はぁっ!?」


 私は人差し指を立てて、順序だてて説明してあげようと思います。

 彼は険しい顔をしています。


「確か、ロディさん。貴方はダーメン家でしたわね。お金で貴族の身分を買ったご子息が私に指を差すのはよいのでしたかしら?」


「ダメなはずです。最低でも、指を切断ですね。ただ、アン様のご身分を考えると、両腕切断でも足りないかもしれませんね」


 クリスくんは本当に賢いですね。

 みんな納得したように頷いていらっしゃいます。

 法律が頭に入っているのは、周りにいらっしゃる方の中には裁判官の方もいらっっしゃいますし、何人かいらっしゃるようですが、裁判であった前例まで頭に入っていたのは私とクリスくんくらいでしょうか。


 クリスくんに言われて納得したみなさんは、ロディの指を見ます。

 ロディは慌てて、指を後ろに隠しました。

 まぁ、あなたの指や腕になんか興味はありませんが、素直な反応でよろしいこと。


「2つ」


 なので、次に行きましょう。


「こんなに綺麗で初心なクリスくんが私と夜の関係になったとお思いですか?」


 私がクリスくんを見ると、顔を赤らめている。

 周りの女性たちがクリスくんを批難しようとしてるロディを睨む。


「お・・・っ、お前が襲ったんだろっ!?」


「お前・・・?」


 私は怒っているわけではありません。ちゃんと大人の対応で笑顔で対応しています。

 だって、これは躾ですもの。ローカス王子の後ろで今にも歯ぎしりを立てようとしている飼い主さんがしっかりとしつけてないようですので。


「ぐぬっ・・・アン様が・・・だ」


 ケルベルちゃんもびっくりするような野犬の威嚇する目で見てくるロディ。

 まぁ、最低限以下のマナーですが、飼い主のしつけができていないのだから仕方ありません。マナーについてはこれぐらいでよしとしましょう。


 でも、それはマナーについての話。

 きっちり、弁明と・・・そうね、お仕置きが必要ですわね。


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