第5話

 私を信じてくれる人たちはおよそ80名。

 半信半疑の浮動層が50名。

 リリスの悪知恵で、叫んだローカス王子を信じる者が20名。

 そもそもリリスとローカス王子の味方が20名。


 周りの顔色を見れば、それぐらいの人数でしょうか。

 ただ、婚約中は王家に嫁ぐのだからと、神官たちの指示に従って清めの滝に言ったり、経典を読んだり。みんなが笑顔になれるのであれば、それぐらい全然平気でしたけれど、こうなっては水の泡。今振り返ると、喪に服してきた気分です。心外です。


 あぁ、悲しい。


 事実を曲げられて、嘘でもそれを信じてしまう人がいらっしゃいます。なのに、そんなことを言うなんて本当にひどい人。それになんですか、ローカス王子。いいえ、それよりも、もっと悪いのはその女。


「お前はあそこの男と寝たんだろっ!!?」


 ローカス王子が指さした少年は、リリスと同い年ぐらいでしょうか。

 私たちよりも3つか4つ年下で、金色のさらさらした髪に、翡翠のような目。肌もきれいで中世的な顔立ちで、とても性格の良さそうな少年でした。


「えっ、えっ?」


 少年も急に指名されてたじろぐ。

 けれど、数名の方はそんな少年と私が大人の関係、しかも婚約中にするなんてありえないと、真実を理解した顔になってくださいました。


「まぁ、かわいらしい少年ですこと」


 私はスカートの袖を軽く持ち上げて、会釈しながら初対面の少年に微笑むと、少年は頬を赤らめました。


「お名前は?」


「・・・クリストファー」


「じゃあ、クリスくんだね。初めまして」


「は・・・はじめましてっ!」


 素直でいい子なのはすぐわかりました。

 かわいかったので、とりあえず頭を撫でました。

 すると、照れ臭そうに笑う顔がさらにかわいかったです。


 ぶるっ


 4つの嫉妬の目を感じて振り返ると、ローカス王子とリリスが睨んでいた。

 ああ、怖い怖い。

 

「私の名前はわかりますか?」


「えぇ、それはもちろんっ!!アン様ですよね。なんたって、この国一美しい女性ですから当然です。握手してもらっても・・・いいですか?」


 あらあら、あなたの方が美しいと思いますよ。

 本当に可愛らしい。

 私は彼の手を握ると、彼の手はとても冷たかったです。

 なので、私は擦って差し上げました。

 

 クリスくんの純粋さのおかげでしょうか。

 浮動層のうち20名くらいは真実を理解してくれたみたいです。

 でも、彼のハニカム姿は新たな嫉妬も生んだみたいです。

 真実を理解しつつも、嫉妬されている女性も5名?いらっしゃいました。


「アン様をそんなことを信じない人なんて、嫌いです」


 ズキューーンッ


 あっ、私の心の音じゃないですよ?

 嫉妬されていた5名の目がハートになりました。

 あらあら、私を見てニコっとしましたよ、クリスくん。


 計算なのか、天然なのか。

 どちらにしても、恐ろしい子ですね。

 でも、クリスくんの顔はほんのり赤いので、やっぱり天然で純粋な子なんだと思います。

 

 クリスくんはまだ成長期なので、私の恋愛対象ではございませんが、もう少し成長したら魅力的な殿方になるかもしれませんね。


(さて・・・)


 私は彼の手を離して、ローカス王子とリリスを見ました。

 

 




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