第90話 開けるなって 後日談
これは私の体験談ではなく、Gくんの話になります。前もって言っておくと、Gくんにそれ以降おかしな事は起こっていないそうです。
どっきりを仕掛け、彼女に男らしさをアピールしようとしたところ、あえなく大失敗に終わってしまったGくん。もはやWデートどころではなくなり、慌てて帰っていく私たちを見送っていたGくんには、ある心配事がありました。
それは小屋に置きっぱなしにしていた小型スピーカー。実のところそれはGくんの持ち物ではなく、彼のお兄さんの部屋からこっそり拝借したものでした。バレれば拳骨は免れない、しかし今から小屋に戻るのはもっと嫌だ……。悩みに悩んだ末、Gくんは翌日、日中にOくんと一緒にスピーカーを回収しに行こうと決めました。
そして次の日、Gくんが起きたのはいつもより30分も早い6時半でした。いつもはお母さんの呼ぶ声で目覚めるという彼ですが、その日はなぜかそれより早く起きてしまったのです。
その理由はすぐに分かりました。寝る前にしっかり閉めておいたはずの窓がなぜか全開になっていたからです。風で浮いたカーテンの隙間から日光が直接入り込み、寝起きのGくんの目を刺激します。
寝ぼけて開けてしまったのだろうか。夢うつつのGくんがそう思いながら窓に手をかけたその時、
閉めろよ
と、昨日の男の声が耳のすぐそばで聞こえたと言います。
結局、GくんはOくんの他に、拳骨覚悟で事情を説明したお兄さんを連れて小屋まで行ったそうです。無事にスピーカーを回収し、奥の部屋の扉をきっちり閉めてGくんは小屋を後にしました。それが功を奏したのか、それとも聞こえた声自体が夢の産物だったのか、それ以降あの声を聞く事はなかったそうです。
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