第10話 相乗りの道

 つい数日前、同期の友人宅に初めて行った時のお話。


 彼女はこっちの方が家までの近道ってことで地図を描いてくれたんだけど、そのルートが細い道路をグネグネ通って住宅街を抜けるようなもので、普段ほとんど車を運転しない私にはとてもじゃないけど通れる道じゃなかった(笑)。だから地図を描いてくれた友人には申し訳ないけど、少し遠回りになる大きな道路を通っていくことにしたんだよね。


 それで、初めての道だったからカーナビを使って運転していると、どうにもカーナビの調子がおかしい。画面は正常に表示されているんだけど、それについてくるはずの「○○m先、右折です」とか「ルートを再検索します」の音声が聞こえてこない。おまけに私の中古車はカーナビを使っているとCDもラジオも聞けないポンコツだから、車内にはエンジン音だけが響いている。


 えー、もう故障?いくら中古車とはいえ買って数か月だよ?というか静かすぎて怖いんだけど……、なんて思いながら運転を続けていると、さらに変な事に気づく。

 さっきも言ったように大きな道路を通っているはずなのに、周りに車が全然走っていない。夜だとはいってもまだ8時くらいだし、外食に行く家族の車だとか残業を終えて帰路につくサラリーマンの車とかが走っていても全然おかしくないのに。


 あれ、これなんかヤバい……?

 相変わらずカーナビはうんともすんとも言わないし、外を見ても人の姿は無い。もう冷や汗ダラダラで、無意識でアクセル強く踏み込んで……。


 それで、よせばいいのに、ちらっとバックミラーを見ちゃったんだよね。

 人ってビビると本当にギャアアアアって声出るんだね。

 後部座席にお爺さんが座ってた。頭の横側にちょっと白髪が生えていて、左目の上の方に大きいイボがあって、染みだらけの顔だった。あ、あと茶色のジャンパーも着てたのは覚えてる。

 血だらけだったり目や耳が無くてこっちを睨んだりしているわけでもなくて、そこら辺で散歩していそうな普通のお爺さんだった……

 そのお爺さん、ニコニコしてた。何か良い事あったんですか?って聞きたくなるくらいに、ニコニコニコニコ……。それがもう怖すぎて、ギャアギャア騒ぎながら思いっきりアクセル踏み込んで必死に車走らせてたら、いつの間にかいなくなってた。今になればよくまぁ事故らなかったなと自分でも感心する。

 

 友人宅について友人が出てきた時は、もう本当に泣く寸前というかすでに半泣き。びっくりしている彼女に話した内容も支離滅裂だったと思うけど、彼女はちょっと申し訳なさそうな顔をしながら「あー、あの道を通っちゃったか……」と。


 彼女が言うには、その道路はいわゆる霊道と重なっているらしい。霊道と道路がぴったり重なっているから、夜にそこを走っていると結構な確率できてしまうのだとか。地元の人はそれを知っているから、大きな道路にも関わらず夜は極端に交通量が少なくなるらしい。彼女がわざわざ細い道ばかり通る地図を渡してくれたのも、あの道路を通らないようにという気遣いだったようで……。

 あくまで霊の通り道ってだけだから大半は無害な霊だと、彼女の知り合いの霊感持ちは言っていたみたいだけど、それでもあんな相乗りは遠慮したい(笑)。いくらニコニコしてただけっていっても、めちゃくちゃ怖かったもん。


 あとこれも地味に怖い内容だったんだけど、霊道と道路がぴったり重なっている場所って意外と多いらしい。皆が霊道を避けて家とかを建てる&元々霊道って言われてる場所は整備されてることが多いから道路にしやすいんだとか……。ってことはあの恐怖体験ポイントが日本中にあるって事!!??

 皆さんも、大きいのに妙に車通りが少ない道路には十分気をつけてくださいね。夜とかは特に。そして、もし誰かが乗ってきても決して動揺しないように。それで事故なんて起こしちゃたまらないですからね(笑)。

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