第2話 増えてた
私の友人のTちゃんは、なぜかぴったり輪になって話す事に拘ります。
例えば4人で話すなら東西南北、5人で話すなら正五角形の頂点にそれぞれが位置するようにと細かく位置調整をしてからでないと絶対話しだそうとはしないんです。
彼女、普段はそんな神経質ってわけじゃないので気になりますよね?
だから、六人くらいで集まって話してた時に聞いてみたんです。
「まぁ……話してもいいけど、変な子って思わないでよ?」
思ったよりすんなり了解してくれたので、私たちは彼女の話を聞くことにしました。もちろん正六角形の頂点に位置するよう位置調整をしてから。
「昔、私の家で百物語をしたことがあったんだよね。中学生だったからそんな本格的なものじゃなくて、適当にお菓子とかジュースを持ち寄って、蝋燭だと火事になるから懐中電灯を一本真ん中にたてて怖い話を適当にするってだけのもの。もちろん百個も怖い話はないから、多分二十個くらいしか話してないんじゃないかな。まぁそんな感じの緩い百物語を友達数人呼んでやったの。で、怖い話が終わって部屋の電気をつけた後……」
と、ここでマイペースなJちゃんが口をはさみました。
「あ、私それ知ってる! なんか百物語中に一人増えてるんだよね!」
「うん……オチとしてはそうなるかな」
「めちゃくちゃ怖い話があって、それを喋ったのは誰かって聞いてもみんな自分じゃないっていうやつでしょ!」
「あー、いや、ちゃんと誰がどの話をしたのかは分かったんだよね」
……え?
「ほら言ったじゃん。お菓子とかジュースを持ち寄ってたって。当然コップとかお皿も用意してたんだけど、その数が人数とどうしても合わなかったんだよね。皿とコップが一人分少なかったの。最初に集まった時に何も言われなかったから、絶対その時は人数分用意してたはずなんだけど」
しんとなってしまった中、Tちゃんは構わず続けます。
「じゃあ増えたのは誰かって話になったんだけど、全員お互いの事は知ってたし、皿やコップは二人の間に置かれてたりしたから、結局最後まで増えた一人については分からなかったの」
じゃ、じゃあその後は……。絞り出すように聞いてみると、Tちゃんは何ともいえない顔でこう答えます。
「そのまま。全員次の日からも今までと同じように学校に通って授業を受けて、そのまま卒業してったよ。たしか全員バラバラなとこに行ったんじゃなかったかな。さすがに同じメンバーで集まるってことはもう無かったけど、今でもたまに連絡は取ったりしてるよ」
そしてTちゃんは話をこう締めくくりました。
「私たちが気づいていないだけで、もしかしたら普通のおしゃべりでもいつの間にか一人増えたりしてるかもしれないじゃん。でもこうやってきっちり等間隔で座るようにしておけば、誰か増えた時にすぐ分かるからね」
翌日以降、この話を聞いた子たちがTちゃんの等間隔座りに協力するようになったのは言うまでもありません。
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