第11話 冒険者ギルド

「俺がギルドマスターのラルだ」


「仮面マン」


なに、このはげ筋肉ダルマ?


くんっくんっくんっ


は?!ちょっ、ちょっと!うわっなにこの人?匂いかぎながらだんだん近づいてくる!ひっ五センチくらいまで顔に、近い、近い、キモい!


「ひっ?!」


「あんた、いい匂いだな」


「………………………………」


キモいぃ、変態だ、ヤバい、逃げたい!


「それにそれだ」


「?」


なに?!僕の後ろになにか見える?ああ、駄目駄目スタントか?僕はおもわず後ろを振り返る。


ん、何もいない、この人、エセ霊媒士かな。


「あんた、暗いところにいるとその黒髪から絶えず虹色の光の粒が飛んでるぞ、自分じゃわからないか?」


ええ、なにそれ?静電気?人間蛍?完全に怪奇現象じゃん。


「そのお面はなんで付けてる、なにか理由が」


「顔に大きな傷があるのです!。僕の従魔獣の件で来られたのですよね!」


「…………」


ふぅっ、とっさに嘘をついたけどなんなの、この人?山田の事で来たんじゃないの?!


「分かった、本題が先だな」


スキンヘッドをかきなからソファに座りなおすラル、早く話ししてよ、もう!


「言いたい事は二つ、冒険者登録と従魔獣登録だ。今、あんたはヤナ町領館にいるが一歩出たらヤナ町の管轄だ。町中を歩くには身分証がいる。まあ、領主と知り合いならこっちはなんとでもなるだろうが、従魔獣は別だ。登録ない従魔獣は、討伐対象になる」


ええ?そんなの知らないよ、山田、今はあんなのロリコンでも僕の大切な友達だ。

討伐対象にさせるわけにはいかない。


「分かった、どうすればいい?」


「冒険者ギルドに来てもらう。一人と一匹で」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「前任の聖女、彼女には元々は僅かな癒しの力しか無かったんです」


リーテリアは神官長室に招いたマリンとマデリンを前に、淡々と語った。


「すると後天性に能力が発現した?」


マリンは、信じられないという顔で聞いた。


「そうです。彼女は女神神殿史上、初めての後天性に強い癒しの力が発現した聖女なのです」


マリンはマデリンと顔を見合せた。

マデリンが聞いた。


「あの、私達が知る常識では癒しの魔法に後天性はないという認識でしたが?」


「ええ、そうですね、でも彼女の能力は聖女の名に恥じない強い癒しの力を有していたのです」


「彼女は力の発現前は、何をされていたの」


マリンが確認する。


「傷も治せない神官見習いでした。ただ、五年前に布教活動の一環でギガール帝国に副神官長の従者として訪れたのですが、その帰国後の発現だったんです」


「「………………」」


あり得ない、率直にマリンとマデリンはそう思った。

今の話しが真実なら、まったくの一般人に近い者が突然、強い魔法力を発現した事になる。

そんな事例は過去、聞いた事がない。


「彼女は病死でしたが、その病も不思議なものでした。病死一月前から感情の欠落がみられ、亡くなる一週間前には完全に感情を表現する事ができなくなり、最後は人形の様でした。医師の確認死因は心臓停止です」


マリンは、ギガールに同行した副神官長の事が気になった。


「副神官長の従者としてギガール帝国訪問後の発現だったとのこと、副神官長は何かご存知では?」


「実は聖女の感情に欠落が見られる様になった直後から、副神官長は行方不明なのです」


「「………………………」」


「それともう一つ、問題があります。彼女の死から三年も聖女が空位なのですが、実は癒し能力発現者は数人、聖女在位以前から神殿への召喚を打診しておりました。ところがそのほとんどの者が何らかの形で行方不明なのです」


「「?!」」


「どういうことですか?」


マリンは、リーテリアを見つめた。

フゥッ、リーテリアは大きなため息をつき、続けて語った。


「行方不明者は全員平民で、全てが盗賊による誘拐です」


「なんてこと?!」


マリンはマデリンを見、マデリンは頷く。


「申し訳ありません、所用を思い出したので先に退出させて頂きます」


リーテリアとマリンが頷くと扉からマデリンが退出した。


リーテリアは続けて語った。


「一人だけ所在の確かな者がおります。召喚にはまだ幼い事と貴族の一人娘な為、断られておりますが」


「!その方は?」


「確か、ギガール帝国貴族でケプラ▪フォン▪レブン男爵、そのご息女です。名前はメディ様だったと思います」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ふぅ、冒険者ギルドにやっと着いた。


疲れた、何が疲れたかって?山田とメディちゃんを引き離すのに体力削られたの!。


メディちゃんにギャン泣きされるわ、山田ロリコンには涙目で訴えてくるわ、大変だったんだから、ハァ、そんでギルド所有の馬屋に山田を預けてギルドの入り口、今ココ!。


ちなみに皇族の証の黒髪はロープを深くかぶって隠してるよ。

こっち、目立ちたくないんだから、そんな地雷、要らないから。


「たのもーっ!」


僕はギルドの扉を抜けて中に入った。

実は憧れてたんだよね!だってラノベの定番じゃん、冒険者ギルド。


うわ、想像通りだ。

正面にカウンターがあって手前左右が待合場所。

で主人公がヘイトを受けたり、オーッ、いるいる、いろんな冒険者チーム?あれ?魔法使いの格好した人やロープの人とかいなくない!?

ああ、この世界、魔法使いが少ないんだった。


え?、じゃあ僕の今の格好でも目立ってない?!


冒険者A「なんだぁ、あのちっこいの?」


冒険者B「おい、おい、おい!、魔法使いのまねごとか?おこちゃまは早く家にかえんな!」


冒険者C「は?なんだ?板のお面か?冒険者は遊びじゃねーんだ!こらぁ!」


ひぃっ、定番のヘイトだけど現実は凄い迫力だ。

それにみんな僕より大きくて筋肉が凄い、早く終わらせて帰ろう。


ええっと受付はと、あ、受付嬢か、あそこだ。

へ?でっかいトンボメガネっ子っ、おさげ頭って、アニメぽいな、可愛い。

うう、カウンター高、僕の肩くらいあるよ!


「あ、あの!」


「?!はい?」


う、引かれてる、あ、仮面のせいか?


「冒険者登録をお願いします」


よし、言いきった。

あれ?顔を寄せてきてメガネを上げてるよ、度があってないのかな?


「分かりました、それではこちらに必要事項を記載してお面を外してください」


「あ、あの顔はちょっと、その、顔に大きく傷があるので、その」


「規則ですのでお願いします!」


「……………………」


うう、聞いてないよ、こんなの、規則?なの、仕方ないか。

僕は渋々、仮面を外した。



「「「「「「「?!!!」」」」」」」



な、ななに?受付嬢が目を丸くして驚いている?は?後ろの冒険者達が口を開けたまま静止してる?!僕の顔、そこまで変じゃないはずだけど??


「あ、あの、ななにか?」


「!あ、いえ、わかりました、登録作業を」


ヒューッ


ん?口笛?!ガシッ、痛っ、な、何が、左肩を掴まれた?!


冒険者A「よう、あんた、冒険者になるなら俺のパーティに入んな、優しくしてやっからよ」


ひう!息がかかる?!重い、な、なんでぇいきなり、なんなの?ガシッ!うわ、今度は右肩を掴まれた!?重いって!


冒険者B「ソイツはやめときな、襲われちまう、おいらが守ってやるからこっちきな」


冒険者A「てめぇ、てめぇこそアブねぇじゃねえか」


冒険者C「はいはい、ぼくのところが一番安全だよ、ぼくのところにおいで?ね!」


ああ、完全に周り囲まれちゃった、なんだよ、みんなでかくて筋肉で汗臭い!やめて、登録にきただけなのに、なんでこんななの?


あ、受付嬢が行っちゃった?!ちょっ、ちょっと、だれか!


「みんな、やめろ!!」


大きな声がした。

みんなを制止する大きく強い声。




僕が筋肉の隙間から見た声の主は、あの森であった高校生チームの一人だった。


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