第12話 誘拐

カル視点◆


「みんな、やめろ!!」


カルは、ギルド全体に聞こえるくらいに全力で叫んだ。

リムとメイサが駆け込んでくる。


「カル!」

「カル、どうしたの?!」


「あの子だ!」


受付付近で冒険者の男達に囲まれ、座りこんだロープを着こんだ小さな子、手元に木のお面?!間違いない、森で会ったあの子!


冒険者A「なんだよ?うるせい!、あ?」


冒険者B「ああ?星の剣つるぎとかのザコパーティの奴らじゃないか?なんの用だ、あ?」


冒険者C「うるさいなぁ、ぼくの邪魔をする奴はだれだ」


三人の冒険者の男達が、気だるそうに振り返る。

あの子、身体を抱えて震えてる?!許さない!


「その子が嫌がってるじゃないか!離れろ!」


冒険者A「てめぇ、なに命令してんだ?」


冒険者B「おいらの邪魔は高くつくよ」


冒険者C「死にたいのかなぁ?」


こいつら、いつも揉めごとを起こしている三人だ。


メイサ「カル、不味いよ、あいつらC級のごろつきだよ!」


リム「くそ、あの子が震えてる?!怖いめにあったんだ!」


ドカァッ


オレはリムの声を聞いた瞬間、奴らに体当たりをしていた。


冒険者A「ぐぉ?!あ、てめぇ!」


冒険者B「が?!やろ!」


冒険者C「生意気な!」


リム「カル!加勢する!」


メイサ「やめて、二人とも!」


その時だ、外が急に騒がしくなる!



バキンッ、バリンッ、ガラガラッ

「グオオオオッ」



一頭のジャイアントベアーが、ギルドの入り口を壊しながら入ってきたんだ。


冒険者A、B、C「げぇ?!」、「うわ!」、「にげろ!」


三人は、壊れた入り口から外に逃げ出した。


ベアーはそのまま、あの子の元に走り寄っていった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ここはランス王国王太子領辺境の町ピケ、そこにロープに身をつつんだ第二王子レッドがいた。


数日前、定期馬車の御者からの情報で、この地にニヶ月ほど前に運んだ客の中にロープに身を包んだ子どもの様な背の低い人物がいたという。


その人物が降りた可能性がある町がここピケ、そしてこの町の先にあるものは、ギガール帝国国境とランス王国国境の間にある魔の森である。


万が一、魔獣が多くいるこの森に一人で立ち入る事があれば、それは自殺行為である。


ただ、それよりもレッドは二つの疑問を考えていた。


何故、彼女は自分達のところに戻らなかったのか?

何故、この地を選んだのか?


「リン、何故だ?」


レッドは今日も、最愛の少女を捜してさ迷う。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「酷いじゃないですか、呼び出しておいてあんな騒ぎになっても出てこないなんて!」


「いや、すまないな、領主のところで盗賊事件の後処理をしていたんでな」


僕は今、ギルマスのラルにプンプンだ。


山田が僕の感情に反応してギルドに突入し、ギルドの入り口をぶっ壊したのだ。


ギルマスが一言、受付嬢に言っておいてくれれば、あんな奴らに絡まれる事もなかったのに!


僕は今、仮面をかぶっている。


あの三人はギルドから追放らしい。

庇ってくれた高校生チームには感謝した。


だけど、もう筋肉は怖いわ。

汗臭いし、力加減知らないし、僕の両肩にアザが出来たよ、もう二度と仮面は外さないからね!


それに、きっと僕の顔、凄く変なんだ。

だから絡まれた。

また、師匠が僕に伝え忘れたんだ!


「だから、規則でもなんでも仮面は外さないからね!」


「は?何の話しだ、登録は終わったし何の問題がある?」


「問題が大有りだよ、もう!山田!森に帰ろ」


今、僕と山田はギルド裏の闘技場にいる。

山田が離れないからだ。


受付嬢は、領館までラルを呼びに行ってくれた。

これ以上迷惑はかけられない。


「ガ?ガウウウン、クゥゥン」


「なに?メディちゃんが心配?ならいいよ、僕一人で帰るから」


「ガウガウガーウ?」


「もちろん、お別れの挨拶はしていくよ」


「おい、あわてて出て行くことはないだろう?」


出口に歩きだした僕達をラルが引き留める。


もう!ほっといてよ!


「この町にはもう用はないから!必要ならまた来るよ」


「なんで登録が❪仮面マン❫なんだ?明らかに本名じゃねえだろう」


「仮名でもかまわない、そう言ったよね!」


僕は後ろを振り返らないで、手をひらひらさせて出口に向かった。



「また来いよ、聖女さま?」




ラルが何か言ったけど、聞き取れなかった。



◆◆◆



闘技場を出て領館に向かおうとその方向を見ると、なにやら煙が上がっている?!


「ガウウウ!」


「メディちゃんが危ない?!山田!いくよ!」


僕が山田の背に飛び乗ると、山田は領館に向かって走りだした。



◆◆◆



僕らが領主館に着いた時、領主館は激しい炎に包まれていた。


門前には避難してきた侍女や執事の人達がおり、その中にハウエルさんがいた。


「ハウエルさん!」


「おお、仮面さま!」


「何があったんです?!」


「十数人の盗賊達が突如、領主館を襲ってきたのですだ、それで館に火を放って」


「みんなは無事なんですか?」


「奥様がまだあの中で、旦那さまが助けに行くと制止も聞かず、飛び込んでいかれたんですだ!」


「!ええ?!あの中って?」


館は凄い業火に包まれている、もう、入ることもままならないだろう。


「それと、メディお嬢様が誘拐されましたのですだ!」


「なんだって?!!」


「ガァアアアアウオオオ!」


ん、山田が凄く怒ってる、分かる、僕も同じ気持ちだ、すぐ向かいたいが今は二人を助けないと!


「山田、気持ちは分かるが先にメディちゃんのご両親を助けないといけない!」


「ガウ」


ラル「おい、こりゃあ、いったいどういうわけだ?」


スキンヘッドが肩で呼吸してる、ギルマスだ。


「詳しくは、そこのハウエルさんに聞いて!僕はメディちゃんのご両親を助けないと!」


ラル「助ける?あの中からか?手遅れじゃねえか!」


「っ!僕が魔法で火を消す!!」


ラル「無理だ、それこそ五英雄でない限りこんな規模の火を消せる魔法を使える分けがない!あきらめろ」


ギルマス、なにを言ってるんだ、諦める?まだ、二人があそこにいるのに?


カル、リム、メイサ「「「仮面ちゃん!」」」


高校生チームが来てくれた!


「みんな!避難してきた人たちを安全な場所に!、煙にまかれた人たちの介抱をお願い!」


カル、リム、メイサ「「「わかった!」」」


「ギルマスもお願い!みんなを」


ラル「あ、?ああ、お前は?!」



◇◇◇



僕と山田は門をくぐって燃え盛る領館の直ぐ側に進んだ、放射熱が凄く熱い。


「山田、全力で水魔法をやってみる!僕が倒れたら二人をお願い!」


「グア?!」


「倒れたらだよ、大丈夫、倒れるつもりはないよ!」


とは言え、こんな規模の魔法は使った事はないし、出来ないかも?いや、出来ないかもじゃない!やるんだ、必ず成功させる、二人を必ず助ける!


「水魔法!」

バシャッ、ジュウーッ


「水魔法!」

バシャッ、ジュウーッ


「水魔法!」「水魔法!」「水魔法!」「水魔法!」「水魔法!」「水魔法!」「水魔法!」

バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ、バシャッ、ジュウーッ




はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ


、か、こんなんじゃ間に合わない!考えろ、なんか、なんかないのか、二人が死んじゃう!そうだ!水素ニ個に酸素一個、水の化学式をイメージ、水素と酸素を集めるイメージから統合するイメージ!


領館上空にまとめる感じで、僕は天空に両手を広げて❪集めて統合する❫を念じる。



ゴボッ、ザッザッザーッ



よし、領館の大きさを超える水の塊が出来た!

このまま、一気に落とす!


「いっけーっ!」




ドッシャーッ、ザッバーァン


やった、火が完全に消えたよ、山田、やったよ、あれ?急に夜になってきた?それになんだか、凄く眠い、ああ、みんな、二人を、後は………




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