第5話
「そういえば、王子自らスパイ活動した成果はあったの?」
私はライアン王子に尋ねる。
「あぁ、そのことだけど・・・成果はあったよ」
ライアン王子は悲しい顔をした。
その悲しい顔をした理由を知ったのは数日後だった。
「・・・ひどい・・・っ」
私が新聞を見ると、リーウェンが結婚した王子は国を挙げて、他国からの人攫いと人身売買を行っていたと書かれていた。
「本当に痛ましい事件だ・・・」
ライアン王子がその事実を知った顔をしていたのを見て、それを調査するために自らスパイに来ていたのだと察した。それから、リーウェンとリーウェンの夫である王子は処刑された。
「キミには辛い思いをさせたと思う。本当に申し訳ない・・・。ただ、ボクにも守りたい人たちがいる、守りたい正義があったんだ」
辛そうな顔をしてライアン王子が私に頭を下げてきた。
「頭を上げてよ、ライアン王子。それは・・・当然よ。だから、私も神に・・・問うたのだから」
私はうすうすお父様の悪事に気づいていた。そして、なんとなくだけれど、王子が真っ当な人間ではないような気がしてしまった。私は教会で、不孝の罪と、不敬の罪。そして、悪事を見て見ぬふりする罪との板挟みについてどうすれば良いのか神に啓示を求めた。すると、神が私に神が見えるであろう世界が見える『神眼』の能力を授かったのだ。
それと、もう一つ。
神は素敵な出会いをプレゼントしてくれた。
「私は、あなたに会えて本当に良かったわ。ライアン王子」
「それは、ボクも同じだよ。愛しのエカチュリーナ」
神は世界を平和にすることなんて簡単にできる。
でも、それをしないのはこの世界は神が創った世界ではあるけれど、神の世界ではない。
人の世界だ。
だから、この力を使ってしまえば、きっとそれは世界を神の思う世界にしてしまう。
私はこの『神眼』を使わずに、ライアン王子と共に、人の力で作るよりよい人の世界を作ろうと誓った。
誰に?
それはもちろん―――
私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。 西東友一 @sanadayoshitune
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