第5話 世渡りと長月

 鬼ばかりと教わりました


 かえるの?

 かえるよ

 どうしても?

 どうしても

 世渡り上手な私のもうひとりの親友は、まこっちゃんのことをこう呼びます。


 世捨て人


 2人とも大層仲良しで、わたしのことをバカとかアホとか世間知らずと呼びます。


 だから私はバカだから

 彼女を呼び止める術を知りません


 ルカにはとくべつだよ

 そういって不思議な月の物を魅せてくれている時と

 同じ匂い、同じ音、空気がして


 ひとりお迎えの人がきました。

 調査の方のようで。無表情でどこかマネキンみたい。豪華な衣装は古くなくて、てっきり着物や羽衣を想像していたのに近未来スーツ。まこっちゃんはいつの間にかドレスになっていて、手にはボレロ。

 ふたりの使うことばはまるで赤ちゃんが話しているみたい。


 こちらをふりかえっていつものダンスをドレスで披露してくれた。お別れじゃないみたいそう思っているうちに、遠く離れていて


 あ


 手をヒラヒラとふって

 ボレロをはおって

 おしまい

 彼女もマネキンのようになって

 二輪車をうしとうさぎが合わさったようないきものが引っ張っていった。


 夢なのか現実なのかわからないまま、家に帰ってきた。月が出ていて、今夜は眠って明日また仕事に行かなくちゃ。


 スマホの画面に連絡が入っていて、急いで開いたらまこっちゃんじゃなかった。


 世渡り上手のマミちゃん。


「あの子地元に帰るって聞いたけど、あんたなんかしたの?」


「元々帰る、でも私のせい、かなあ?」


「泣いてんの!?そっち行くわ」

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