第4話 渡り廊下と長月

 何気なく言ったのに、ものすごく驚かれて、はじめてみる顔だった。


「嫌なら全然、見てるから、ね?」


「踊ろう」



 はじめてみる顔が更新。見たこともない花のような笑顔で。


 私は彼女と教室の後ろの少し広いところで、彼女の躍りを見て真似して、踊った。

 回っては止まって、切れのある動きでフリがいくらかある。足はときどき大きく飛んで。長い衣装を着飾ったら、さぞやきれいだろうなあ。下がる、横へ、剣のように持っている何かを振り下ろす。そのうちこの踊りの曲なのか口ずさみだす。覚えやすいメロディで高くてきれいで、聞いたことがないのに懐かしくて。私は天使か精霊か、空に浮かんでいるような気持ちにすらなった。夕陽が眩しく光っていた。


 それから友だちになった。周りも明るくなった彼女とすぐまた打ち解けて、流行りの曲を歌ったり踊ったりしている。渡り廊下で暇さえあれば私たちは踊った。


 はじめての出会いは竹林ではなく、学校。はじめて月の人だと打ち明けてくれたのは長月ではなく霜月で。私は月街の話に夢中になって、その反面かぐや姫のお話のように、別れる日を何度夢にみたかわからんよ。


 かぐや姫は罪を犯したの。どんな罪かはまこっちゃんは言ってくれない。月がどれだけすごいところか知っている。内緒だよといって魅せてくれた月の人の鏡はぴっかぴかで。変わった色と匂いがした。地球は島流しの場所。なにもない、汚い、辛くて大変。


 まこっちゃんはいつか月に帰る。

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