第3話 砂漠渡りと長月

崩れ落ちるのはいつも突然で。きっとうまく歩けない。急に気温が変わる砂漠のようだ。砂嵐やバッタが視界を遮る。テレビでやってた、大群でいると強気だけど、ひとりだとそうでもないって。そんなもん。


なくならないもの、一気に教室の熱が冷えた気がした。彼女はただ知りたいだけで、自分に貢げと言ったわけではない。それはわかるけど、

彼女自身も


「ほしいわけじゃないの」


そう言った。


彼女はそれから一気に、近寄りがたいきれいな置物になってしまった。周囲の気配を察知した生き物のように静か。委員長は謝りにいったらしい。なにも悪くない。


放課後に彼女を見かけた。それはまたきれいで絵になる、夕陽が差し込んでて。ひとりなのに私は思いがけず声をかけた。


「まこっちゃん!」


「私はマコト、だけど?」


「あだ名!嫌いかな?」


「好きに呼んで、あなたの名前は?」


「私はね、ルカ」


「るかっちゃん?と呼ぶのが正しいの?」


「正しいとかないって、好きに呼んで」


「じゃ短い方がいい」


「誰か待ってるの?」


「誰も待ってないわ。委員長にも謝られて、」


「あーいいんちょ真面目だから」


「言葉って難しい」


「そうねぇ、あー、まこっちゃんは好きなものとかない?向こうでやってたこととか」


「ああ他の子にもいったけど踊ってたわ、でもこっちのと違くって」


「えー!?どんなの?踊るの私も好き」


「踊ったらいいの?写真や絵にかいたりしてもらったけど」


「え?一緒に踊りたい!」


「え!?」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る