第11話 ぐずるハナ
「おはよう」
翌朝起きて身支度を整えてリビングダイニングへ行くと寝起きの悪かったハナがぐずっており、父さんとアルバロがオロオロしていた。
「カナちゃん〜」
ぐずるハナが駆け寄るので抱き止める。
「どうしたの?」
「ハナもうパパと寝ない〜」
父さんを見るとしょんぼりしている。
「どうして?」
「いびきがうるさい〜」
「何度か起こしちまったようなんだ」
「ハナ眠れなかったのにパパだけスヤスヤひどい〜」
「ごめんな…」
「ハナの気持ちは分かるよ、あとでお昼寝しようね。お昼寝してすっきりしたら誠実に謝ってる父さんにハナもこたえようね」
「…ぅぇぇぇぇん」
「父さん、ご飯にしよう。ハナ、ご飯だよ」
「すんっ」
どんな時でも“ご飯”に反応するのは愛犬時代から変わっていなくてアホかわいい。
「今日はホテルの朝食バイキングの人気メニューを再現した」
トースト、クロワッサン、ソーセージ、ベーコン、スクランブルエッグ、サラダ、オレンジジュース、牛乳、カットフルーツ。
「今日も美味しそうだね、いただきます」
「…ます」
ハナの機嫌はまだ戻らない。
「トーストにはバターとジャムな。パンとジャムはカナの手作りだ」
「これをカナが?すごいねえ!」
「短大の栄養科を卒業して地元のパン屋に就職したんだ。そこでパン職人の見習いからはじめてスイーツも作るようになったの。退職してフランスの製菓学校やブーランジェリーで学んでから再就職したんだ」
ハナのトーストにバターとジャムを塗ってやりながら答えた。
最初の就職は地元密着型の店舗で、再就職先は観光客がターゲットのちょっと高級なお店。地元の素材を使ったスイーツが評判で通販でも人気だった。
「スイーツ!僕の世界ではまだこれからなんだよね。パンもこんなに柔らかくないんだ」
「ハード系のパンは地球でも人気だよ。私も大好き」
「カナちゃん!これもっと食べる!」
もくもくと食べていたハナが元気になった。
「パンのおかわり?」
「ジャムとバター塗って!」
「はいはい」
厚くバターを塗ってジャムをたっぷり乗せてハナに渡す。
「ありがと!」
いったん席を立ってタオルをぬるま湯で濡らして戻り、ジャムでベトベトなハナの口元と手を濡れタオルでぬぐう。
「もっとパンを食べる?」
「たまご食べる!」
スクランブルエッグやフルーツを美味しそうに食べている様子は楽しそうで、もうすっかり機嫌が直ったようだ。
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