第4話 おばあちゃん
「ねえカナちゃん」
シロクマのハナが私の足をくいくいする。とてつもなく可愛い。
「なあに?」
「おばあちゃんは?」
ハナが生きていた頃はおばあちゃんと父さんと私とハナで3人と1匹暮らしだった。
「おばあちゃんは私が短大の頃に亡くなったのよ。もう歳だったしね。眠るような最後だったよ」
私の足につかまるハナがガーン!とショックを受ける。
「おばあちゃん…」
ハナがポロポロと涙をこぼす。
「ハナちゃん…」
どっこいしょと抱き上げると両手でしがみついてくる。ものすごく可愛い。
「ハナが亡くなった後、近所の人が猫やらなにやら飼わないかって勧めてきたんだが、おばあちゃんは毎回断るんだ。ハナを看取れたからもういいって。動物の家族はハナが最後だって」
「ぅうええぇぇぇ…」
父さんの回想でハナが号泣だ。アルバロまで泣いているので父さんがティッシュを箱ごと渡して背中をさすっている。
「すんっ」
「落ち着いた?」
「うん」
「はい」
リビングのテーブルに座って3人でお茶をすする。ハナは私のお膝でお水だ。
「ハナもお茶飲む!」
私の膝の上で私の湯呑みに手を伸ばすので父さんが取り上げた。
「お茶はやめておきなさい。あとでインターネットでペット用のミルクを買ってあげるから」
「大丈夫だよ」
「何が?」
「ハナは僕の世界の魔物に生まれ変わったから。地球の犬のルールに縛られないんだ。人間と同じものを食べて大丈夫」
「本当に?」
「うん」
「塩分は控えた方が良いとかは?」
「同じで問題ないよ」
「玉ねぎもいいの?」
「大丈夫」
父さんが新しい湯呑みにお茶を注いでハナに渡す。
「熱いからふーふーしなさい」
「うん!」
両手で湯呑みを持ってふーふーするハナが可愛い。
「さっぱりしてるね!おいしい」
「お茶が気に入った?」
「うん」
「ご飯もお腹に優しいものから試してみようね。味覚が変わったならドッグフードは食べないかな」
愛犬だった頃のハナのご飯はウェットタイプのお肉の缶詰を茹でた野菜でカサ増ししてドライタイプのフードをトッピングしていた。
そのほかに犬用のおやつ。砂肝とかジャーキーとかビスケットとか。ミルク棒を両手で押さえてポクポク食べる姿は可愛かった。
「お肉の缶詰おいしいよね!また食べたい」
「じゃあ試しに1つ買ってみようか。美味しかったら追加で買おうね」
「ありがとカナちゃん。ねえあれも食べたい」
「あれって?」
「パパが作ってくれたおじや」
「そうか!じゃあ今日はおじやだな!」
急に父さんが張り切り出した。
「アルバロも私たちと同じものでいい?」
「うん、ありがとう」
なんだか疲れた。ご飯を食べて落ち着こう。
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