リンドウは咲く

僕が暗い顔をして学校にやってきたある日。

事件は起こった。



「今日転校生がくるらしいぜ!」


「マジ?誰かすげー気になるんだけど!」



「なんとここだけの話……女子らしいぜ。」





「うえー!可愛い子くるかなー!」


「来るだろ、これはもう当たり確だろ!」


とかうちのクラスの男子が騒ぎまくっていた。

一方女子はというと



「新しい転校生…女らしいよ。」


「うわぁ……大丈夫かな…その子。前に問題起こして飛ばされたとかじゃないよね?」


「7割確実じゃんそれ。」


「それなー…。まじで大丈夫かな…。てかその子が仮に良い子だったとしても可愛い子だったらちょっと…メンタルが…。」


「あぁ、そっか。あんたあいつのこと好きだもんね。目移りしないか心配って訳か。」


「てかこの時期に転校とか有り得ないんだけど。」



とか見苦しい嫉妬を交えながら話していた。

僕はそんな雑音を鼻から聞きたくないと思ったから青色のヘッドフォンを耳に当てて一人端の机で音楽を聞いていた。




(…転校生とかどうでもいい…。)




そう思っていてもヘッドフォンの質が悪すぎて、周りの音が良く聞こえて音楽に集中できない。







      うるせぇよ。







そう思った。

そんなこんなでクラスが盛り上がっているところにガランガランという音が鳴り、先生の声が響き渡った。



先生が転校生を引き連れてやってきたんだろう。



僕はなるべく見ないようにする。興味ないし。見ても時間の無駄だし。


そうだ。なら教室の窓から空でも見ていよう。この席のこの角度からの空は絶妙な色合いでいいんだよな。だからついつい見たくなっちゃうし、ずっと雲が動いているのを見ていたい。

あっ。雲があっちいった。どこへ行くんだろう。綺麗な白色のうさぎのような形をした可愛い雲なんだけどな。





「…茉喜です。よろしくお願いします。」








   え?茉喜?





黒板の方を振り向くとそこにはあの時から大分大人びた顔立ちをした女の子───いやでもあれは間違いなく茉喜だった。少し面影があった。とりあえずそこには茉喜がいたのである。


茉喜はこちらを見て驚いた顔をしてそして静かに微笑んだ。








僕は空の方を向いて、涙でうるうるした目で微笑んだ─────。





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