海に引き込まれ
そう。そんな訳で僕には友達ができなかった──────。
今日も中浜に縛られる。
治験薬を沢山飲まされる。
この道を歩くごとに近づいていく。
「おかえりなさい。雅人。」
ああ、絶望の始まりだ。
僕の部屋の前で多分中浜はカモミールのハーブティーを飲んでいた。
匂いがそんな匂いだった。
苺の甘いいい匂いがした。
きっと外には沢山の苺があることだろう。
りんごのシャキッとしたみずみずしい音が聞こえた。
りんご──────。
りんご……そういえば昔。お父さんがまだ優しかった頃。りんごを切って食べさせてくれたな…。次の日にはあそこ行きだったけれど。
そうだ。僕は──────。
父親に愛されていた…。
──人間は愚かなものだ。そこに隠れてる愛情が分からずに甘い誘惑に乗っかって、逃げて、現実から目を背けて。
窮地に立たされた時にあの時は幸せだったんだって気づく。
(父はあんなに変わってしまったけれど──母はそんなことはなかったのかもしれない……。)
目の前にりんごが落ちてきた。半分にヒビが入ったりんごが。
探すしかない。
この広い世界の中で。
探すしか。
翌日から僕は図書館に通うことにした。
中浜も図書館くらいなら、と許してくれた。
但し隣に御兵一人がつくという条件で。
まあこの御兵は"監視人"だろうという見解は小さいながらついていたので本を選ぶのに相当苦労した。そうしてでも私は彼女に会いたかったから。僕の母に────。
その願いも虚しく───────。
僕は中浜雅人(なかはままさと)14歳。今とても人生に絶望している──────、
という訳だ、
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