高い柵の中で

ニコニコしながら毎日のように検査を強要する大人たち。


それを受けて心身ボロボロになっていく僕。





もうこの環境に耐えられなくなってしまった。




毎日夜になるとだだっ広い真っ白の部屋にぽつんと一つある小さな格子状の窓から月を眺めていた。





   自由になりたかった──────。






ある日僕は限界で外に出たくて、花を摘みたくて、あの子に会いたくて────僕はこの世界を抜け出した。




     部屋から抜け出した。


走って走って記憶に残ってる来た道へ走ってゆく。

あそこなら抜け出せる─────。

僕は死ぬ勢いで息を切らしながらも必死な顔で汗をかきながら素早く、誰にも見つからないように走った。


(…僕は……!ここを抜け出したい……!)







      着いた。










     柵があった。










     出られなかった。












     見つかった。





「雅人くん、どうしてここにいるのかな…?」



背筋がゾワっとした。泣きそうになった。後ろを振り返ると絶対アイツがいる。いつもニコニコしながら過酷な検査をしてくる、僕が信じちゃダメだった人。





     中浜─────。





僕はギュッと手を握って手汗をかきながら頑張って笑顔を張り付けて言った。





「僕、学校に行きたかったんです……。ごめんなさい……。」







前々から僕を学校に行かせるか中浜達は話し合っていた。下手に人を近づけるとこの研究がバレるんじゃないかとか通わせた方が市役所からの目が光らないんじゃないかとか。僕はまあどうでも良かったが。





でもこうなった今しょうがない。この理由を使うしかない───────。







中浜はきょとんとしてそれから





「そうなんだね。学校行きたいんだね。」




と言った。





次の週から僕は学校へ行くことになった。でも学校に行けたところで変わらない。





    






    監視される日々は続く。




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