マリーゴールド

引越し業者の人は


「終わりましたので運んでいっちゃいますねー。」


と言って素早く帰っていってしまった。

取り残されたのは僕と中浜と空っぽの家だった─────────。








大体の荷物はさっき運ばれていったがまだ僕の所有物───────花瓶とか押花とかは残っていたので家に取りに行った。


(シラーは……持っていこ…。)



ここでの思い出の花────アゲラタムも昨日ぐちゃぐちゃになってしまった……。ゴミ箱を見ながら僕は泣きそうになってしまった。だからせめてもと思い、シラーを大事に持っていった。





もう全ての物を家から無くした。


(あっという間だったなぁ……。)



そう思いながら中浜が準備した車に乗ろうとした。すると遠くから誰かが走ってくるのが見えた。





   茉喜だった────────。




「茉喜!」


僕は茉喜のもとに駆け寄った。そして僕達は顔を見合った。中浜も遠くから見ていてくれた。



「ごめん、、。この前は…。」


「ううん……。いいの…。私の方こそ気付かなくてごめんなさい…。」


暫く重たい空気が流れた。そうだろう。この子はこんな僕にもう会いたくないだろう…。

僕はさよならと言って立ち去ろうとした瞬間茉喜からマリーゴールドを手から出した。



「はい!これ!離れちゃうけどこれからも元気でいてね!ずっとずっーとこれからも友達だよ!」


彼女は泣きそうな顔でそう言った。



僕はマリーゴールドを受け取った。そして


「ありがとう!じゃあね!」


と言って手を振った。茉喜も手を振ってくれた。

僕はこれから前を向いて生きていけると思った。そう思った。




そう思った自分が馬鹿だった─────。












僕は中浜雅人(なかはままさと)14歳。今とても人生に絶望している──────。

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