夢は目覚めて

「やっぱりこの御神木いいねー!」

「こら、茉喜。登っちゃダメでしょ。」

「だってここからの景色めっちゃ綺麗なんだもん。」

「ほら、危ないから降りなよ。」

「えー!」





医者中浜が来て2日後僕らはまた楽しく遊んでいた。

これが最後、だけれども。





中浜はあの後スケジュールを話し始めた。


「君の父親は多分また1週間後に来る。だからそれまでにここに何もないようにしなくちゃいけない。だからそれまでに遠くのところ──都市部の東京へ向かう。そんなにここから東京まで遠くないから出る日時はいつでもいいけど、なるべく余裕を持って今から5日後に出たいと思ってるよ。」


(5日後…………。)


僕は表情を曇らせた。


(後5日後もしたら茉喜に会えなくなる…ということか……。)


正直言って僕はお父さんの束縛から逃れられることは嬉しかったが、茉喜と離れてしまうことの方が嫌だった。






暫くして中浜が申し訳なさそうに


「この花くれた子にお別れを言ってきな。」


と言った。

中浜の顔がどこか泣きそうになってたのを鮮明に覚えている。







そして今日が来たと言うわけだ。

そうつまり今日は僕が茉喜に会える最後の日だと言うこと。お別れを伝えなければならなかった。


1分1秒でも長くいたい。

そう思った。でも幸せな時間にはトラブルがつくもので。もっと一緒にいたかった。



お別れを言えなかった。




「雅人?」



たくさんのルリタマアザミが生い茂っている真ん中で僕は倒れていた。










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