花は枯れて

「…前より良くなっているようですね…。びっくりですよ…。」


薄暗い雲が窓から顔を覗かせている中僕の担当医、中浜響(なかはまひびき)は僕の父、中谷誠(なかたにまこと)にそう告げた。


そう僕は今日診察日だ。茉喜と遊んでから2日後のことだと思う。医者が突然やってきた。僕は危うく外出しそうだったのでしなくて良かったとホッとしていた。



一方中浜は僕がホッとしている中で淡々と僕の父と話をした。感染リスクが低いことや進行具合とかそんなどうでもいいこと。僕はそんなことよりずっとずっと花が綺麗だとこの花をもっと手入れしたらどれだけ綺麗になるんだろうとそんなことを考えていた。花を触って遊んでいた。



(あの子可愛かったなぁ。もっと遊びたいなぁ。)



雨が少しずつ降り出していく。



(この花も綺麗だし。やっぱりあの子といると僕…)



だんだんと雨が強くなって窓に雫がつく。



(僕はあの子のことが…)



「雅人!聞いてるのか!おい!」


そんなことを考えた瞬間僕は父に引っ叩かれた。どうやら僕は父にずっと呼ばれていたらしい。


「お前のことだぞ!ちゃんと聞けよ!」


父はそう言って僕を睨みつけた後ふっと顔を上げて花───アゲラタムをみた。


「何だこの花。」


父がニッっと笑い花をくるくるとする。


「こんなものどこで手に入れたんだろうなぁ。」


ニヤニヤとしながら僕を見る。僕は寒気がした。


「ご、ごめんなさ…」


僕が謝っている途中で父は僕の体に当たるようにアゲラタムが入った花瓶を落とした。




「もういい!お前はここでずっと閉じこもってろ!」




そう言い、父は僕を押し入れに入れて固く南京錠をかけた。音でどれだけ沢山の南京錠がかけられたかが分かった。



中浜は何にもしなかった。助けてくれようともしなかった。終始冷たい目でこちらを見ていた。




(ああ…。馬鹿だなぁ。僕。)




(人間なんて…醜い生き物だ……。)









雨の中ただ一つのアスター ステラホワイトは咲いている。

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