花を摘むと

「こここんなに広かったんだ…。」


僕は今までこんな御神木みたいな木が立っているのをいやそれ以前に小さなラベンダー畑の場所も知らなかった。今までこんな遠くまで来たことが無かったからである。まだこの小さな冒険に僕は罪悪感を抱いていた。でも僕の少しもの幸せ──生きがいをなくすのは僕にとっては痛手であった。

暫くぶらんぶらんと歩いているとアスチルベを見つけた。


「あ!アスチルベ!」


アスチルベを摘もうと思ってアスチルベに手を近づけた瞬間誰かの手に触れた。


     誰─────。


振り向いて見るとそこには一人の小さな可愛らしい女の子がいた。女の子は首を傾げて


「見たことない顔だなぁ。」


と不思議そうな目をして僕を見て言った。僕は今まで人に用心してきた方だったから見つかったことに驚きを隠せないでいた。


(いや…こんな遠くまできちゃ流石に見つかるか…。)


残念だったけれど父親に告げ口されちゃあ元も子もない。そう思い、立ち上がって去ろうとした瞬間女の子に腕を掴まれた。


(この子…僕のこと告げ口するために…怖い…)


そう思いぎゅっと目を閉じた。すると、彼女は笑顔で


「これ欲しかったんでしょ!あげる!」


と言って花をくれた。今まで人とあまり関わったことがなかったから世の中の人全てが怖い人だと思っていた。しかし、世の中の人全てが怖い人ではないんだとそう思った。


(この子となら──)


「ねぇ、君名前は?」


そう恐る恐る聞くと


「茉喜(まき)!」


と言ってくれた。また彼女も


「貴方は…どなた?」


と聞いてきたので


「雅人」


と答えておいた。名前を聞けてまたもや聞いてくれるなんて僕にしたら嬉しいことでしかなかった。だからこの嬉しみを噛み締めながら帰ろうと後ろを向いた。彼女は僕が帰ると分かると


「雅人ー!じゃあねー!また待ってるからー!」


と言って見送ってくれた。僕はダメなことだと分かりつつもまた会いに行こうと決心した。

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