森の中は広い

今日は窓に日光が差し込むくらいよく晴れたいい天気の日だった。


「眩しっ」


と思いながらも花瓶の花に水をやった。でもその花___紫色のシラーが枯れてきていたので外に摘みに行こうと思った。医者は明日来るから少しだけと思い、点滴袋を深いポッケに隠して年相応の服を着て扉をそうっと開け、外に出た。

外に出ると部屋で感じていた気温とは比にならないくらい暑かった。丁度梅雨も終わり、夏に近づいていた頃だったからだと思う。僕は家から右の方向へずっと歩くと小さな湖があり、その周りに綺麗な花が沢山咲いていることを知っていたため、そこで摘もうと右に歩いた。病気の僕には優しい平坦で周りには木が沢山ある道だった。鼠が1,2匹住んでそうな長閑なところだった。


「綺麗だなぁ。」


風に揺らされる木が生き生きしているようでとても綺麗だった。


(それに比べて僕は……。)


(いや気にしない!)


そんなやり取りを自分の中でしていた。

暫く歩くと日光に照らされて透明色に見える綺麗な湖に着いた。少し見惚れてしまったが、医者に見つかるかもと思い、花を急いで探すことにした。


「ベーバナ、アリウム、スカビオサ…どれもなんかピンと来ないなぁ。」


そう思いつつ、湖の周りの森の中を散策していく。途中綺麗だと思う花を見つけたが、そこまでではなかった為、突き進むことにした。暫くすると小さなラベンダー畑のようなところに出てしまった。


「随分遠くまで行ってしまったなぁ。」


と思い、もうこれ以上探さずラベンダーにしようと思って摘もうとした。しかし、僕は小さなラベンダー畑を足で踏んでしまった。踏みつけられたラベンダーは平たくなっていてとても飾れるような状態ではなくなっていた。


「仕方ない。先へ進むか。」


そう思い、また暗い森の中へ進んでいった。

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