秋墳鬼唱
合澤臣
序
身に紫の濃霧をまとわりつかせながら森を抜ける。昼でも鬱蒼として暗く不気味に静まり返っていた。
がさがさと背の高い
しかし探せども見当たらない。これは担がれたかな、とまたひとつ息をこぼした。わざわざ出てくるまでもなかったようだ。無駄足になるのも癪なので粘っていたが、これだけ歩き回っても似たものさえないから、おとなしく帰ったほうが良いな、と伸びをした。
ふと、つんとしたにおいを嗅いで眉を
「…………?」
立て続けて、また。
どさ、どさり、と。
なんだ、と音の正体が気になって足を踏み出す。人っ子一人いないなかでたいそう奇妙だった。重い積載音は今や小瀑のごとく連なっている。
においが一段と濃くなった。どこか甘い
びくりと肩を跳ねさせ、ゆっくりと顔を上げる。帰途の少し坂になっている
おぼつかない足取りで進み、あたりを包むひどい臭さに袖で鼻と口を固く覆いつつ、もうすぐ森の切れ間から空が見えるというときに立ち止まった。
景色は途切れ深い谷があるはずの視線の先に、なぜか山があった。山、としか思えなかった。黒々として
理解が及び絶叫した。胃酸で
あったのは黒く凍った
多くは首から上が無かった。
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