第19話 イベントに変化が?
今日はマナーの授業がある。
次週に男女ペアでダンスの試験があるということで、皆授業の前から浮足立っていた。
残念ながら、マナーの授業は必修の為、同じ教室にユリウスとララがいることになる。
シャロンは彼らが仲良さげに話している姿にイライラした。
この間の茶会で、なまじユリウスに親切にしてもらったせいかもしれない。あの後少しだけ二人の間を噂されたが、それもすぐに立ち消えた。
そして、授業も終わりに近づいたころ、来週の社交ダンスのペアを決めることになった。
そう、これはララと王子が仲を深めるためのベタなイベントなのだ。むしろベタだからこそ素晴らしかったイベントともいえる。
なおペアはくじ引きで決められ。シャロンはモブとペアになり、ララはユリウスとペアになる。それをやっかんだシャロンが「私とペアを代えなさい!」と命令し、それが王子に露見するという安心のお約束展開だ。
しかし、分かりやすい展開だからこそ避けやすいともいえる。今回は何もしなければよいだけなので非常に楽である。
「シャロン様、くじを引きに行きませんか?」
ぼうっと窓の外を見ているとジーナに声をかけられた。くじが始まった瞬間わらわらと人が集まっていたが、それも少なくなってきている。
この授業は学年全体で行われるので結構な人数になるのだ。シャロンはジーナやレイチェルとともにくじを引きにいった。
「お先にどうぞ」
と言って順番を彼女たちに譲る。どのみちシャロンが引くのはモブなのでどうでもいい。周りではすでにペアが決まり大騒ぎになっている生徒たちもいる。
「皆さん! ペアが気に入らないからと言って他の方と交換などなさらないように、いろいろな方と踊ってみるのも経験ですよ」
とアン・クレイトン先生がなぜかシャロンの顔を見ながら牽制するようにいう。やはり短期間では、悪役のイメージはなかなかぬぐえない。
やる気なく、くじを引くと「17」という数字が出てきた。
掲示板にジーナと名前を書きにいく。
「あら、シャロン様のお相手はまだお決まりではないようですね。私はパトリック様ですわ」
そう言うジーナは嬉しそうだ。パトリックのどこが良いのかシャロンには全く分からない。
シャロンの相手はモブ決定なので空欄の横に名前を書いた。誰が相手でもこの際どうでもいい。
ちなみにこの乙女ゲームの悪役令嬢はララが王子を選ばなくても結構な確率で被害を受ける。あの当時は過剰なざまあが流行っていたからだろう。
発生しているイベントから言って、おそらくララは王子ルートに入っていると思われるが、他の攻略対象者の好感度もマメに上げているようなので、まだ選びあぐねているのか、もしかしたら逆ハーエンドかもしれない。
一応法律の上では一夫一婦制のこの国で、逆ハーエンドがどうなるのか見て見たい気もする。とやけ気味に考えた。
開いた窓の外を眺めていると声をかけられた。
「シャロン」
ユリウスが金糸の美しい髪を少し乱し、息せき切ってシャロンの元にやってくる。その姿が、壮絶に美しくてくらくらする。
「はい、何でしょう」
何とか意識を保って返事をする。
「お前とペアになった」
「え? どうして、私のお相手が殿下なのですか?」
彼はモブではなく、メインヒーローだ。明らかにおかしい。それともこれは、何かの冤罪フラグ? シャロンは一瞬で疑心暗鬼に囚われた。
しかし、ユリウスはシャロンの初恋の人であるし、子供の頃から皆に親切な王子様だった。だから好きになったのだ。
ゲームでも腹黒いと言う設定はなかったと思う。
まさか、父ダリルがユリウスの政敵として立ちはだかっているのだろうか? だから自分が表向き悪役令嬢として
「シャロン、私では不満なのか?」
ユリウスが眉根を寄せ、不機嫌になる。
「ああ、いえ、そんな決してそんなわけではありません。あの、先に言っておきますが私はくじで不正など働いておりません」
すると王子が訳が分からないというようにきょとんとする。そんな表情をされるとちょっとかわいいと思ってしまう。
「もちろんだ。シャロンの名が先に書きこまれていたから、不正の働きようがないだろう?」
そう言われても一抹の不安は残った。
しかし、それ以上に彼と踊れることが素直に嬉しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます