第168話黒巫女召喚士と深紅の魔神その9

 ここは龍の巣。

 龍帝と呼ばれるドラゴンが支配し管理している第二層に存在する超高難易度バイオーム。

 ここで龍帝と戦ったプレイヤーは未だにいない。

 そんな所に来ているのは火の超越者ホオ、ではなく、風の超越者であるフウが来ている。

 ロンドに返事をしたのがフウだからだ。


 フウは伏せている龍帝の下に足を運んだ。


「──話した通りでー手を貸してくれないかーな」


「くだらんな。我は行かぬ」


「なぜ? お前は強さを求めていた筈だ! 超越者の中でも郡を抜く程の強さを持つ3人と戦えるのだそ! なのに」


「余裕がなくなっているぞ。多対一ではつまらぬ。1対1のワンオンワンこそが我の望む戦い方だ。それに、我は龍姫りゅうき様と戦うつもりは毛頭ない」


「⋯⋯レイシアか。でもいいのか? 僕の言葉を無下にすると言う事は、我々と争う覚悟があると言う事だ。昔と違い僕達は」


「それをくだらぬと言うのだ愚かの者!」


「⋯⋯ッ!」


 今までにない覇気と威圧により黙り込むフウ。


「超越者はそれだけ個の力が強い。そして、より力を伸ばす事が出来る。たが、他者と協力して得られる経験、力は個で戦った時よりも減るのだ。超越者は群れない。個であるからこそ最強の存在なのだ。それを分からぬお主らに未来は無い。それに、お主らが強くなっている反面、我々も強く成っている事を忘れるな。我の精鋭部隊は貴様如き八つ裂きに出来る事を知っておけ」


「⋯⋯ッ! あーあーもー! しーらない!」


 フウは新たな場所へと移動する。

 3人に怖気付いていた者達はこの気に立ち上がり、倒す作戦に乗った。

 そしてフウは現在、鬼の里と言う三層の超高難易度バイオームだが、里である。

 和風な建物が幾つか頓挫し、その中で1番大きい建物の最上階へと移動する。


「何しに来た」


大嶽丸おおたけまるよ。我々に協力し超越者の中の異物を排除しないか」


「拒否する」


「なに?」


「今、我々は忙しい」


「何故だ?」


「新たな姫の後継者が現れた」


「そんな事どうで⋯⋯ッ!」


「それで良い。それ以上続けていたら、お前よりも強い鬼達が貴様を殺していた所だ。あぁ、勘違いするなよ? 我も貴様を殺していた」


「すまない」


 鬼族にとっては姫の存在は絶対である。


「もうすぐ、世界中の鬼が集まる。集まった時、我は精鋭部隊を連れて姫を迎えにあがる。その時に邪魔でもしてみろ。貴様らを根絶やしにする!」


「分かったよ」


 大嶽丸の眼力に怖気付いたフウは帰還した。


「異物、か。あいつらはまた聖魔対戦を引き起こそうとしているのか? アホくさい。起きたところで、マーリン共に蹂躙されるだけだ。なぁ。酒呑童子、貴様が生きていたら、共に姫を迎えに行き、争いなんて忘れ、鬼族を繁栄させながら酒でも飲みたい所だな」


 背中をさする大嶽丸。

 背中にある大きな切り傷の跡。

 三明の剣の保護を貫通しての斬撃を受けた時に出来た傷である。

 この傷はレイシアが心の底から感情を湧き出した時の攻撃。

 つまり、レイシアの本気の斬撃である。

 レイシアの本気の攻撃を耐えた存在、唯一の存在。

 それが大嶽丸と言う鬼である。


 ◇


 身長は戻った。

 だが、武器がねぇ! え、鎌とか棒があるって?

 そんなん私らしくねぇ!


 それにオウガの形がだんだん変わって⋯⋯キモ!

 さっきまで標準の人間みたいな体だったのに、上半身が太く下半身が細い、ヒョロがり状態になってやがる。


『カカ』

「ッ!」


 オウガは軽く走っただけだろう。

 だが、その軽く走っただけで一瞬で私の目の前に現れたのだ。

 見下げるオウガ、見上げる私、オウガは拳を掲げる。

 そして、振り下ろす。


 上半身の攻撃は呪いようでステップで躱せる。

 さっき、フランがここは魔法なんちゃらで耐久力が上がっていると言っていた。

 だが、オウガはそれを軽く破壊した。

 半分になった事により速攻近接アタッカータイプになったようだ。


 仕方ない。『手に持つ』武器がないのなら、武器を出すしかない。


「フラン!」

「うん」

「しっかり捕まってろよ。じゃねえと、吐くぞ」

「え」


 跳躍、足の裏を引っつける、掌を引っつける。

 背筋をピンピンに伸ばし、細胞を金属質の物に変換させる。

 魔法を使ってその場でクルクル回転し、どんどん速く成っていく。


「リマちゃん流攻撃術、リマちゃん大車輪!」


 魔法を後方に放って前方に加速してオウガの方に接近する。

 そのタイヤの速度は新幹線クラス! 有るか知らんけど。

 レールなんてねぇ! だから魔法で上手く方向を決めて、オウガに衝突する。


 オウガは両手をクロスして防御体勢に入り、私の自己流攻撃術を防ぐ。

 マッスルパワーモリモリの上半身は攻撃だけじゃなく防御にも使えるってか!

 そんなんチートじゃねーか。


 いや、この戦いにチートクラス以外の攻撃力なんて似合わねぇな。

 これはチートじゃない。純粋な力だ。


「ちっ」


 フランがうぷっと限界に来そうだったので、足から魔法を放ってバックする。

 さらに、オウガが移動するようにブラと揺れたので、地面に向かって魔法を放ち上昇する。

 今、私はロボットになった気分。


 足から出す魔法は様々な色をしたレーザーだ。

 だが、その色は明るかったり暗かったりと様々だ。


 オウガは私の下で停止する。

 だろうと思った。

 あんな筋肉モリモリのマッソー状態であのモヤシレベルのヒョッロヒョッロの足じゃ跳躍出来ねぇよな。

 オウガは地面に手をめり込ませ、地面を抉りとり、それを固めて私に投げる。


「うんなもんリマさんに当たるか!」


 後ろに向かって魔法を足から放ち、加速して地面の塊にドロップキック。

 破壊し、そのまま進み蹴る足の部分を金属質の物に変換さ、オウガを蹴る。

 どうせ大したダメージは入んねぇ事は承知之助。


 金属質から従来の物に戻し、魔法を放ってバック。

 それを高速で追って来るオウガ。

 速いが、遅い。

 その程度の攻撃速度アタックスピードじゃ私に攻撃を当てる事は隕石に当たるよりも不可能。

 いや、この世界なら隕石結構当たりそう?


 足から魔法を放って高速でバック、オウガを中点に円を描く様に足から魔法を放って背後に回り込む。

 魔法を放って加速して前進する。


『カカカ』

 上半身と下半身の合わさっている中心がグルンと回る。

 腕を横に伸ばしているオウガの太い腕が高速回転の遠心力を乗せて、私の顔面にクリーンヒット。

 私の顔面は吹き飛び、地面をトントン、コロコロしメルと目が合う。

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