第167話黒巫女召喚士と深紅の魔神その8

 オウガから複数個の球体が放たれる。

 ステップで避けて接近する。


深紅魔法スカーレットマジック、【スカーレットブレイドマジック】』


 オウガが後ろに大きくステップしながら腕を振るう。

 合わせるように1本の深紅の斬撃が飛んで来る。

 私の腕からは斬撃は出ないようだ。


「あと少し」

「あと半分!」


 小さくなった分、フランを抱えるのが難しく成ったが機動力は上がった。

 斬撃を横に避けても魔法が顕現する。その仕組みが出来ている。

 だったら、斬撃を破壊するまで!


「ベルゼビュートハンド!」


 気合いの入れ直しを込めて適当に今考えた名前を叫び、掌に暴食の力を解放する。

 魔法の斬撃を食べてさらに進む。


 魔法が放たれても横からサトシやフェンが飛び出て破壊する。

 こいつらの方が速いの?


「あぁ、成程」


 フェンの尻尾には黒い刀、サトシの腹には白い刀。

 さらに、顔には霊符を貼っている。

 バフを活用して私よりも速く動いてんのか。

 しかも、他にもバフ系のアイテムを使った痕跡があるな。


「ワオ」

「フェン⋯⋯あぁ。助かる!」


 跳躍してフェンの上に乗り、フェンが足から冷気を放ちさらに加速する。

 フェンにしがみつき、自分が見た景色を瞬時にフェンに伝える。

 フェンの毛並みはとてもモフモフしてイサとは違うと分かる。

 仕方ない。イサは防御メインなので毛が硬いのだ。


 頃合を見てフェンを足場に跳躍し、オウガの背後へと移動する。

 オウガは背中から魔法を放とうとするが、意味は無い。


「動け」


 分裂分身、オウガの右腕を分身体となった右腕が地道に侵食し、そして暴食の力を解放する。


『があああ!』

「内部から食われる感覚をとくと味わいな! お前がフランの魂を内部から食らおうとしたようにな!」

「【ブレイク】」


 フランが背中に触れ、魔法を発動してHPを1割減らす。

 オウガは跳び退いて、内部から右腕を引っこ抜き適当に投げて、魔法をそこに向かって放つ。

 暴食の力を常に解放している状態の右腕に意味は無い。


「リマちゃん。ここは魔法回廊を刻んで耐久力を上げてるの。だから、流石に危険」

「先に言ってよ! 右腕戻って来い!」


 右腕から複数の色をした翼が生えて、私の所に向かって飛んで来る。

 オウガはかなり体が抉れたようだな。


 ◇


「揃ったな」


 ここは会議室、異空間でありこの場所は空間の主に管理されている空間。

 神であっても決して見つける事も破壊する事も出来ない空間。

 円卓に順番に席に着くはここの空間の主、木の超越者、ロンド。

 蜘蛛の超越者、アラクネのアネ。

 炎の超越者、ホオ。

 風の超越者、フウである。


「でーさー、なんで妾だけなのかなー?」


「すまんな。最近ユグドラシルとの繋がりが切れたもんで、全員を集める事を可能にする強度の空間を作る事が出来なかった」


「あーそー。妾の蜘蛛こども達の所にー帰りたいかーら、はよーしてな」


「ああ。ホオやフウは何か意見はあるか?」


「最近、闇の存在が掴めなくなった」


「そうか。闇の捜索はホオに任せる」


「分かった」


「僕は特になーし」


「了解した。では、少人数だが始めよう。超越者が世界を統一する為の会議を」


「質モーン」


「なんだアネ」


「妾、表立って動いて良い? 最近妾のお気に入りが殺されたんだよねー。ソイツを殺す」


「良いだろう。だが、今から話し合う本題に関わるならダメだ」


「本題?」


「そうだ。我々の仲間、超越者が率いるこの団体に入団しないクズ共の事だ」


「そこそこ居るよ?」


「そうだな。確かに。その場合は全戦力で潰して来た」


「僕はあのクソジジィに逃げられた事が今でもムカツーク」


「我も同感だ。我の炎を拳一つで薙ぎ払うアイツは許せん」


「ソイツはもう歳だ。超越者に成っても不老に成れなかったのだからな。ソイツの後継者を探し出し仲間に入れるか、殺す。そろそろ本題に入るぞ。本題は、黒巫女、剣士、魔法士の事だ」


「「「⋯⋯ッ!」」」


「その怒りは抑えてくれ。我々も全戦力で持って戦ったが、たった3人の力に負けた。確かに相手は魔物も使役していた。だが、数は圧倒的に多かった。超越者の力も我々の数が相手では不利な筈だった。だが、負けた。その理由はつい最近判明した」


「妾きーにーなーるー」


「それは、神の血だ」


「ロンド、それは誠か?」


「あぁ。超越者は所詮神に成り損ない。世界の調和者。神の加護も庇護も受けれない孤立した存在。だが、あの3名は違った。神の加護を受け、さらに庇護も受けていると判明した。極めつけに、師であった神々の血を取り込んだらしい」


「その情報は誠なんだな」


「あぁ」


「どこ情報なーの?」


「神、ハデスからだ」


「ハデス、だと? そいつは、死んだのではないか?」


「いや。確かにハデスは死んでいるが、それは半魂だったようで、もう半分の魂が復活を遂げようとしている。そして、我はハデスから血を貰った」


「おい待てロンドよ。それは妾達に神の血を入れると言う事か? 忘れたのか? 我々はこの世界を完全に支配し、そして神を殺す為に動いているのだぞ?」


「ああ。だからハデスの力を借りる。ハデスも神を殺す事を望んでいる。そして、世界には興味がないらしい。あるのは、復讐のみ。我々と共に、例の3人に復讐をする」


「妾は反対よ。他の2人は!」


「我に血はない」


「同意」


「⋯⋯そうだったわね。あなた方の体は作り出している偶像だもんね」


「だが、我々の想像を遥かに超える力をあの3人は持っている。神の力を少しでも手にしないと勝ち目はない」


「⋯⋯⋯⋯あーあー! もーう! ロンドがそこまでの覚悟を決めたのなら妾も飲むわ!」


「ありがとう感謝する。ハデスの血も限度がる。時間はかかるが、我々の仲間全員に配る予定だ。それまで、ハデスには血を提供して貰う役目をして貰う」


「ねー。本当に信用していいのー? ハデスは、邪神なのよ」


「あぁ。問題ない。その証拠が、俺の魂だ」


「成程。ハデスの半分の半分の魂を取り込んだ契約をした訳ーね」


「あぁ。だからあやつが裏切る事はない。初めに、確実にあの3名を殺る。その為の戦力を用意しろ。俺は他の超越者にも声をかける。ホオ」


「はーい」


「お前は中立の超越者共に協力を仰げ」


「それはバカじゃない? 中立を出来るのはそれだけの力があるからだよ? それに、あんな奴らが動くかーな?」


「問題ない。中立の奴らが中立なのはあの3名に恐怖している者や強い者と戦いたい奴らばかりだ。丁度いい機会だろう」


「りょーかい」


「楽しみだ。あの3人を殺すのが」


「ええ」


「ああ」


「うーん」

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