第166話黒巫女召喚士と深紅の魔神その7
オウガは私から切り離した手を掴み、刀を抜いて投げ飛ばす。
腕だけを掴み、顔の下の部分がパカッと開く。
そこに、私の腕は放り込まれ、一瞬でオウガの右腕が伸びる。
赤色では無く、肌色で人の腕と手だと分かる見た目である。
深紅色の透き通る体をしているオウガの右腕と手だけが人間のソレだった。
『⋯⋯これが、神の加護の力か。感じるぞ! カオスマジック、カオスバレッド』
右手を突き出しそう叫ぶ⋯⋯しかし、魔法が発動する事はなかった。
当然だ。
私の手は細胞だが、オウガに細胞は存在しない。
ただ、腕をのりで引っ付けたような物だ。
魔力が親和する訳もなく、あいつが混沌魔法を使える訳がない。
さらに言えば、私の体の細胞は一つ一つに人格が存在する。
「わ! リマちゃん。小さくなった?」
「ま、右手がないと不便だしな」
身長は低くなるが、右腕があると無いとでは違う。
レイシアから借りた刀はオウガが天の彼方に飛ばしてしまったし。
レイシアはオウガに攻撃出来ない状態だし。
『仕方ないか。
オウガがここに来て詠唱をし始めた。
それだけの魔法なのか、はたまた不純物が混ざったせいか。
『【スカーレット・ジャベリン】』
空中に複数の深紅の槍が出現し、雨のように降り注ぐ。
私は地面を向いて、目を閉じる。
視覚に使う神経を全て、混沌の感覚に移す。
ムニンは反動で動けない。誰かが頑張ってくれるか、イサ達が防いでくれるだろう。
ハクとクロとカルなら躱せるかな?
こっちも集中しよう。
槍が出現するタイミングを見て、降りるスピードを計算。
槍と槍の落ちるスピードの違いはないが、出現するタイミングは違う。
落ちる速度が同じなら必ず僅かな隙間が生まれる。
その隙間を計算し、自分が通る道を見つけ出す。
一呼吸置いて、走る。
目を開けない。姿勢を崩さない。多分、沢山のプレイヤーが1度デスする。
ま、悪いけどオウガに対して役に立たないし困らないんだけどね。
オウガは未だに地面に居る。
接近して背中にフランを近づける。
周囲の気配が変わる。目を開けていたらきっと周囲の色が変わっている事だろう。
跳躍したら槍に突っ込み、さらに導き出した道から外れる。つまり、槍が刺さる。
一撃でどれくらい削れるか分からない。
オウガが魔法名を唱えての魔法発動をしているので、脅威は未知数なのだ。
それに、フランに一撃でも攻撃を当てさせる訳には行かない。
横に大きくステップしても、オウガもフランを倒せば良いと分かっているのか、広い範囲で同じ気配を感じる。
発砲塞がりとはまさにこの事。
「
足に様々な色の風が纏い、前進すると私の体が半透明の赤色にぶれて進む。
その速度は私が操作出来ない程であり、直線的にしか進めない。
慣れれば細かい動きも出来るだろうが、今は無理だ。
気配が変わった所で解除して再び上空の槍を把握、躱す道を模索、発見しその道を進んで魔力の大元であるオウガに接近する。
『ネズミめ』
「せめて
【縮地】を連続で発動して速攻でオウガの下に接近する。
降り注ぐ槍は全て消滅し、オウガは大きくバックステップをする。
『
オウガの斜め4方向に深紅色の魔法陣がそれぞれ展開される。
その中から顔サイズの球体が連続で発射される。
腕の横から刃を生成させ伸ばす。
腕を薙ぎ払い球体を切りながら進む。
オウガの背後にレミリアと師匠が現れ、互いに右手を突き出す。
「【スタープリズン】」
「神呪の鎖、展開」
星型の何かがオウガの背後に顕現し、オウガを粘りで引っ付ける。
その星の背後から黒紫の鎖が伸びてオウガを固定する。
『な、う、動けぬ!』
「サンキュー師匠とレミリア!」
「ありがとう。黒い人とお姉ちゃん」
オウガの魔法が止んだ所で高速ダッシュだ!
オウガに肉薄し、私の右側から右手が伸びる。
オウガの顔面に触れ、言葉に出す。
「【ブレイク】」
『がは』
「かは」
「ッ!」
私はバックステップする。
オウガの残りHPは5割!
星も消え、師匠とレミリアはレイシアの下に戻る。
オウガは顔面を再生させながらこちらを睨む。
『クズが、底なしのクズがぁ。我はお前に力を与えただろう。お前に復讐出来るだけの力を与えだろう。復讐出来る機会を与えただろう。その罪も全て、我が背負ってやっただろう。なのに、なぜ、なぜ我の邪魔をする。我の体にも適合出来ないゴミの分際で! 元々ゴミだったお前を使ってやったのだぞ? なのにどうして我に命懸けで刃を向ける』
「⋯⋯寝ている時に、聞こえた。私は、確かに世界を憎んで恨んでいた。だけど、私を気にしてくれていた人もいた。最後に、言葉を残してくれた。私の為に戦ってくれる人を知った。私は盲目的に自分を正当化させる為に逃げて居た。ゴホゴホ、でも、私は向き合うと、そう決めた。お前は、この世界にとって害悪だ。私がクズ何も、ゴミなのも、全部受け入れてやる。だが、ゴッホゴホ、だが、お前、だけは、私の失敗のお前は私が倒す。例え、この命が朽ち果てようと」
フランの顔が青白くなっていた。
吐血のエフェクトを散らししている。
そんな状態でも、オウガを倒すキーはフランにある。
フランもそれを望んでいる。
私1人の悲しみや感情でフランの思いを踏みにじる訳にはいかない。
オウガとフランの睨み合い、そろそろ終わらさて良いだろう。
「行くよ、フラン」
「うん!」
私は地を蹴ってオウガに接近する。
目を開けているので色の変化がきちんと分かる。
『くだらぬ』
一瞬で周囲に大量の槍が顕現する。
それが同時に私とフランに向かって突き進む。
「ガル!」
「フェン」
「ワオ!」
「【
正面は犬の顔の模様がある盾が出現して防ぎ、左側は氷漬けにされ、右側は純白の剣に寄って消失する。
「深淵の渦、展開!」
背後に4つの【深淵の渦】を展開し、槍を吸引して相殺させる。
吸引する事に寄って1箇所に複数本の槍が集まる。
これにより、全方位から放たれた槍は完全消失する。
そして、私は再びオウガの下に接近する。
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