第162話黒巫女召喚士と深紅の魔神その3

「れ、レイシアは力を己の意思じゃコントロール出来ないんだ。普通の時に扱える力は20パーセント未満、今の金髪状態は40パーセント未満まで出せる」


 えぇ。

 そんな感じなの?


 師匠から言われた言葉を聞いてレイシアとオウガの戦いを観戦する事に決めた。

 制限時間もないし、ちょっとレイシアの力が気になる。

 この場合、技術だけはシュラの方が高いが、強さ断然レイシアだろうな。


「気持ち悪い顔で乗りやがって⋯⋯覚悟しろよゴミがッ!」


 レイシアの握っている剣⋯⋯刀から何時の間にか剣に変わっていた。

 剣にオーラが蛇が動いているように数本出て来る。


「喰らい斬れ、大蛇オロチ


 剣を小さく払う。

 4本の刃が蛇のようにオウガへと伸びる。

 オウガはステップして躱し、魔法をレイシアの所に顕現させようとしたが、それよりも速くオウガに攻撃を当てた。

 蛇のように伸びる刃は変幻自在で収縮可能らしい。


『い、一体何が、起こって』


 数回後ろにステップして距離をとるオウガ。


「おめぇよ。どうしてお前程度で私達を越えたと思っていんの? 生きてる年月が違ぇんだよハゲ。マーーレミリアの妹? の体に居たとか関係ねぇんだよ。若もんがイキリよって。イキんなら強くなってからやれよゴミ」


 オウガは再びレイシアの所に魔法を顕現させようとしたが、再び伸びる刃に阻害。

 ピンポイトに顕現させる事は出来ないと判断したオウガは右手から魔法を連射する。


「キメェ」


 レイシアは高速で剣を振るい全ての魔法を粉々に切り裂いて、地面を蹴ってオウガに肉薄した。

 たったワンステップでオウガに肉薄したのだ。

 初めて見せる完全に恐怖に染ったオウガの顔。


大蛇オロチ


 レイシアは剣を横薙ぎに払う。

 オウガは転移魔法でレイシアの背後に周り、両手をレイシアに向けて魔法を⋯⋯放てなかった。

 オウガの背中に黒色の羽が何枚も刺さり爆発したのだ。


『グッ』


 苦渋の声を漏らすオウガ。

 グリムの魔剣、黒翼の羽の自爆機能。

 当然のように自動修繕するが、その時間は2倍の長さを用いる。


「リマさん! 行きますよ!」

「もうちっと、観戦したかったけどな。で、なんで持ち上げてんの?」

「⋯⋯⋯⋯サエさん!」

「あいよ!」

「まって、本当に何?」


 セカイが私を両手で持ち上げ、目の前に闇のリングが出現する。

 チャクラを私に流してクルクルと回るセカイ。

 私が目を回す事はありえないのだが、セカイは大丈夫なのだろうか。


「今!」

「はい!」


 サエの掛け声と共にセカイは私を投げた。

 闇のリングを通りさらに加速した私は、一直線上にいるオウガの背後に回った。


「そう言う事か!」

「いえ、違います!」


 私はここでオウガの隙だらけの背中を攻撃しようとする。

 だが、セカイ曰く違うようで、体に浮遊感が襲う。

 次の瞬間、私の目の前にセカイがいた。

 いや、私が地面に居て、さっきの私の位置にはフランが居た。


「ブレイク」

『グハッ!』


 ゆっくりと落下して行くフラン。

 相手のHPは二割減って残り八割である。

 地を蹴って加速し、フランの真下に移動してキャッチした。


「えへへ。ありがとう。こうして貰うように頼んだんだ」

「一言言ってくれよ」


『クソ共がァァァァ!』

「だーかーらー1番のクソはお前だって」


 オウガの隣に跳躍して立つレイシアがオウガに剣を振るう。

 オウガは魔法の決壊も合わせて防ごうとするが、上手く行かず、少し腕を掠め斬られて吹き飛ぶ。


「お願い。オウガに有効打撃与えられる力が私にある、から。連れて行って」

「あいよ」


 私はフランをおんぶした。

 さらに、背中の細胞を動かしてフランを固定する。


「落ちんなよ!」

「うん」


 地を蹴ってオウガに接近する。

 だが、レイシアの方が当然速く、レイシアがオウガを斬り飛ばしてオウガは地面を数回バウンドする。


「リマちゃんよ。吹き飛ばすぞ」

「え、ま」


 師匠の妖術で加速し、さらにオウガの元へと吹き飛ばされる私。

 体勢を正してフランの手がオウガに伸びるようにする。

 オウガは床にレーザーの魔法を放って遠くに飛んで行く。

 私はクルッと回転して壁に足を着けて着地する。


 オウガの元にレイシアが高速移動して剣を振るう。


『何回も同じ目に合うと思うなよ!』


 レイシアが魔法に包まれ、オウガは地面を蹴飛ばして後ろに下がる。

 剣をグルンと振るい魔法から脱出するレイシアは、服は汚れていた。


『⋯⋯ば、けもの』


 おいおいオウガよ。

 それ言ったらもうお前にはレイシアは倒せないって言っているもんだぜ。

 でも、超越者を超越した(キリッ)ってしてたオウガが超越者のレイシアにボコボコにされているのは不思議だな。

 超越者を1段階上の中でも最下級戦士がオウガで、超越者の最上位戦士がレイシアで、その場所レイシアが上なのか?

 ダメだ。分からん。

 てか、レイシアに普通に斬られてもあんまりダメージないんだよな。


「なんでフランの攻撃は効くんだよ」


 いや、それが『正規ルート』かもしれない。

 ボスの中では特定の攻撃しか聞かなかったり、マップに設置されている道具を使ったりして戦うボスがいる筈だ。

 この場合、フランをオウガに近づけて倒すと言うのが攻略方法なのかもしれない。


「レイシア!」

「あぁん?」

「眼力つっよ! じゃない! レイシア。フランをオウガの近くに行かせたいから、あまり吹き飛ばさないで来れ」

「⋯⋯善処する」


 私の背後に師匠とレミリアが出現する。


「お姉ちゃん」

「フラン、後でいっぱい話そう。昔の事も、今の事も、今はアレを倒すよ」

「⋯⋯うん」

「リマちゃん。我々も支援に徹する。レイシアのスピードについて行け!」


 師匠とレミリアが沢山のバフを私に与えてくれる。

 さらに、妖術と魔法を使って私をオウガの元へと吹き飛ばす。


「⋯⋯暴食魔法【ベルゼビュート】」


 空気中の魔力も食らってやる!

 空気中の魔力を食べて、私達を包み込む魔法を顕現させないようにする。

 最初からやれば良いと思われるかもしれないが、これをやると消費するMPが回復するMPを超えるので、魔力を得ているのにマイナスになる。

 しかも、暴食魔法は本当に沢山のMPを消費するので使いたくない魔法だ。


 ただ、フランがいるし、病み上がりかは知らないが、それらしい状態のフランに成る可く攻撃は与えたくない。

 それに、さっきから魔法を使おうとしていないフランを見ると、無理させたくない。

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