第161話黒巫女召喚士と深紅の魔神その2
オウガへと接近して刀を振るう。
バックステップで距離を取りながら魔法を放たれるが、左手を前に伸ばして食べる。
レイシアが斬撃を放って、レミリアと師匠がそれぞれ、魔法と妖術を放つ。
『退屈だな』
「そうかい。ちと、やってみっか」
刀を地面に刺して、パチンと両手を合わせる。
ゆっくりと開き魔法陣と術式が現れる。
ダメだ。魔法と妖術は同時に発動出来ない。
魔法陣と術式は展開出来ても発動させられるのは一つだけ。
大丈夫。今の私なら、今なら行ける筈だ。
合わせろ。
『そんなあからさまに何かやるのを、無視すると思うか?』
「陰楼流、影霧」
『チッ』
一瞬で背後に接近したレイシアがオウガの背中へと刀を振るう。
オウガは跳躍してそれを躱し、レイシアに向かって魔法のレーザーを放った。
「火炎の太刀」
燃え盛る斬撃でレーザーを切断する。
オウガは数回ステップで地面に着地し、その場所に移動した師匠。
師匠は右手に術式を展開して妖術を近距離で放った。
「フゥ。よし来た。
黒い稲妻と黒い風が混ざった物がオウガへと向かって放たれた。
師匠の妖術と私の妖術式魔法は同タイミングにオウガへと衝突した。
全方位に結界の盾を顕現させてそれを防ぐが、ピリピリとヒビが入り粉砕される。
『クソ』
防御体勢に入ったが、師匠の妖術に吹き飛ばされる。
HPが1割まで減った。
「【ギンガドラグーン】【サンダードラゴン】【ファイヤードラゴン】【アイスドラゴン】
4種類の龍がオウガを呑み込む。
「丸呑みだねぇ。神殺しの太刀」
その中の少し距離をとったオウガの背後へとレイシアが出現し、刀を振るった。
赤と青が混ざったその斬撃は確かにオウガの背中を捉えただろう。
魔法と斬撃が衝突して激しい光を辺りに撒き散らした。
オウガのHPは。
「な!」
1割減った辺りから1ミリも減っていなかった。
あそこまでの魔法と斬撃を諸に受けて被ダメゼロっておかしいだろ!
そうか、受けてない。なら、どこ⋯⋯。
「かは」
『背中ががら空きだよ? ふん』
下を見ると、赤いオウガの手が見えた。
完全に私の腹を貫いてやがる。
「はは。なぁオウガ。その程度で私にダメージが通ると思ったか?」
『ん?』
確かに最初はダメージ受けたがなぁ、掠った時点で手は打っている。
今の私はネマの体のように不運的な実態なんだよ。
体を細胞レベルで動かしたり分解したり変えたり、それが可能なのだ。
「最高だぜ。捕まえた」
『⋯⋯ッ! く、そ!』
手をひっこ抜こうとしても抜けないだろう。
抜けさせねぇ。
私はオウガの手へと両手を重ねる。
オウガの体は現在肉体を持たない状態だ。
それって、もう魔法と何ら変わりない、よな?
「盛大に食らってやるよ!」
暴食の力を発動。
今の私の体全体が暴食の力を発動させている状態である。
腕を食らい、手を食らう。そこそこMPが回復したぜ。
「背中ががら空き、確かに私は油断していた。だが、仕方ないだろ? お前のような弱い奴にしさ」
『どんな強がりだ⋯⋯⋯⋯なぜ、だ!』
私を貫いて食われた右腕と手はその後も再生する事はなかった。
そこにオウガは驚愕しているのだろう。
HPは再生しなくても欠損部分は再生出来るってよく分からない事をしようとしていたみたいだけど、残念だったな。
その意味を込めて最大限嘲笑った笑みを顔に貼り付ける。
「残念だっなぁ? お前の右腕はもう無い。生えても回復しても生える事は無い。何故なら元々無かったのだから」
『どう言う事だ?』
「そのままの意味だ。私はお前の右腕と言う真理を食らったのだからな」
『訳の分からぬ事をぬかしよって』
あぁ、私もいまいち分かってない。
ただ、それが可能でそうなってお前の右腕は無くなったとしかな。
もしかしたらまだこの世にあるから回復、再生出来ないのかもしれない。
その場合、オウガの右腕は私の胃袋の中にあるって事か?
ま、良いか。
「お前も、あまり油断すんなよ」
『ッ!』
「神殺しの太刀!」
「龍鳥空地! 展開!」
「【ブルーゾーン】【プロミネンスプローラー】」
オウガの背後にレイシアが回り斬撃を、正面からは師匠が妖術を、真上からレミリアが魔法を放った。
「遠隔設置型妖術式魔法、【深淵のカオスピラー】」
オウガの立っている地面に妖術式魔法陣が展開され、天井に伸びるような深淵と怨念の柱が昇り、レミリアの魔法とぶつかる。
4方向からの攻撃を諸に受けるオウガ。
『ぐ、グアアアアア!』
オウガがエネルギーを爆殺させて周囲を吹き飛ばす。
レミリアはバックステップで距離を取り、師匠とレミリアは転移で距離をとった。
激しい風圧が体全身を背後に押そうとして来る。
HPは3割減っている。
『この、クズ共がァ。抵抗なく命を差し出せば楽に殺してやる予定だったが、もう辞めだ。お前ら全員無惨に殺してやる。泣いても、命乞いしても、許さない』
「なんか勘違いしてねぇか? 元々私達はお前を殺すつもりなんだよ」
「リマさーん! 受け取ってください!」
「来たか」
レイシアから貸して貰っている刀を左手に持ち替え、背後に右手を伸ばして刀を受け取る。
『死ぬがよい』
私、師匠、レミリア、レイシアの周囲の色がどっぷりと変わる。
「来るよ! モードチェンジ、【玄武】!
四獣刀が黒色に変わり、2本の刀を地面に突き刺して自分を包み込むように竜巻を出現させる。
黒い風に包まれた私。
刹那、私全体を包み、妖術式魔法も包み込む魔法が顕現した。
ゴリゴリと減っていくHP。
暴食の力も解放して防いで行く。
師匠は自分の周囲に結界を霊符を使っての展開により防ぎ、レミリアも結界の魔法で防ぐ。
魔法等が使えないレイシアは純粋に範囲外まで逃げていた。
高く後ろに跳びオウガから距離をとる。
『まずは貴様からだ』
「魔法使いながらその移動はずるいって」
レイシアを踵落としで地面に叩き付けるオウガ。
さらに、レイシアに馬乗りになり、顔面に向かって連撃の拳を高速で放つ。
殴る度に地面が抉れて行く。
だが、オウガが感じた感覚は地面を殴る感触だけであり、人間らしい物を殴る感触が無かったのだ。
「レディに馬乗りってのは許容出来ないよ」
『な』
ジャキンと真っ二つになり吹き飛ぶオウガ。
吹き飛ばされている間に体をくっつける。
「全くさ。私達は手加減して戦ってあげてんのにさ、調子に乗り過ぎだよ? 中途半端な強さのせいでモフリ以外に戦えないし、ほんと、使えない」
『なに、を言って』
「あのさ。超越者を越えた越えたって言ってるけどさ。何処基準な訳?」
『え』
「さっきから私達の事、下に見すぎじゃない? クズクズ言ってるけどさ、お前の方が十分クズだよ? ほら、かかって来いよ。カスが」
魔法が収まり竜巻を消すと、中指をピンピンに立てて銀色の剣を構えて、銀色の髪は金色になっているレイシアが居た。
「レイシアがほんの僅かにキレた」
師匠が本気で驚いている。
何が、どうなっているんだろうか?
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