第136話黒巫女召喚士(悪魔)と智天使の激闘
サトシの姿が変化していく。
本来の姿をあまり出しておらず、綺麗な金髪は緑色へと変色していた。
だが、今はモフリと言う強敵に本来の姿を表して金髪を剥き出しにしている。
純白の4枚の翼。大きく成った天使の輪。聖なる光を纏う大剣。
サトシはモフリと同じ【最終進化者】である。
だが、古参プレイヤーであり上位プレイヤーとの差は確かに存在する。経験、レベル両方。
天使に愛され、天使の力を授かり、天使の力を行使する事の出来る存在、それがサトシである。
NPCのみで構築された天使教から異例のプレイヤースカウトが入る程に有名なプレイヤーである。
◇
金色の髪に琥珀色の眼。
輝く大剣に大きく成った翼に天使の輪。
「これが俺の本来の姿だ。さぁ。本気で行こう!」
翼を羽ばたかせて一瞬で私の前に現れる。
ベルゼブブと戦った時と同じ緊張感。
たけど、相手はベルゼブブよりも弱い。
ベルゼブブは本来の力を取り戻していない状態で私は大量のバフを貰っていた。
それでも尚、ある程度の緊張感があった。
だけど、今はその時よりかは小さいバフで同じくらいの緊張感だ。
大丈夫。勝てる。
高速で振り下ろされる大剣を皮1枚で躱す。
仮面が壊れる事は無いけど、切り傷が付いてHPが本の僅かに減る。
地面を滑るようにステップして、止まる。
「【飛翔】」
ナミの演算によって飛ぶ事自体は問題無くなった。
だけど、感覚が変わるのでモナの本調子が出せなく成る。
まずは体制を立て直そう。
「何処に行く?」
背後に急接近して来たサトシさんが大剣を横薙ぎに振るう。
くるりと大剣を回るように飛び、躱して刀を突き出すげ首を傾げ躱される。
サトシさんを蹴って加速して距離を取るがすぐに縮められ、その大剣を振り下ろされる。
刀を盾のようにして防ぐが、その勢いを全て殺す事は出来ず、地面に向かって吹き飛ぶ。
「解」
背後に急いで【風玉】の霊符を放って解放する。
生み出される上昇気流によって持ち上げられ、落下は無くした。
それでも安心している暇なんて無く、地面に着地したのと同時にバックステップ。
私が先程まで居た場所に大剣が突き刺さり地面に亀裂を広げる。
「良く、本当に良く避ける」
「⋯⋯」
まずい。
まともに攻撃が入る気がしない。アレを使うしかない。
相手はスキルを使っていない。なのに、あれだけのスピードと火力が出せる。
だけど、あれには構築の時間がそこそこ必要となる。
だけど、どうしたら⋯⋯。
「答えは、決まっているか」
ネマちゃん。行くよ!
私の背中から4本の触手のような物が生える。
先端を刃へと変貌させる。
地を蹴ってサトシさんに接近する。私とナミは構築に集中。
モナが回避に徹する。攻撃を仕掛けると構築がキャンセル扱いに成るので自らの攻撃は出来ない。
ネマちゃんは細胞1つ1つが体で、耳で、目である。
大まかな動きはモナに任せ、細かい動きに集中して貰う。
「くっ、小賢しい」
故に、ネマちゃんの触手は1本1本規則性のない動きが可能になる。
躱す事に全神経を注ぐモナ。
「くそ」
後ろに一旦引くサトシさん。
だけど、意味は無い。
ネマちゃんの触手が3本内部に戻って行く、これは細胞を集める為の行為だ。
1本の触手だけを異常に長くしてサトシさんに向かって突き刺す。
その動きに気を取られたようで一瞬反応が遅れるサトシさん。
その隙で距離を詰め、ネマちゃんの触手は再び4本となり攻撃を仕掛ける。
振るわれる大剣。当たれば簡単に斬られるだろうが、すぐに引っ込めてモナがバックステップをすれば問題ない。
距離が多少空いても1本の飛距離が伸びる状態にすれば攻撃は可能。
攻撃の手を休める事無く攻める事が可能。
これが私達なりの召喚士としての戦い方だ。
サトシさんが空に飛ぼうとするが、飛べるのはこちらも同じ。
翼に向かって伸びる刃。大剣で弾き金色の斬撃を放って来るがくるりと回り躱して、回転の勢いを利用してネマちゃんの刃を振るう。
刃の向きも自由自在に変化する。それがネマちゃんだ。
「クソ」
「いくら速くても! いくら強くても! 攻撃さえさせなければ問題ねぇ!」
「⋯⋯ッ!」
私の意識が弱っている事もあるのか、現在体の権限は全てモナに移されている。
私がキャラ作りしていると思われてしまうので止めて貰いたいが、それを言っている暇なんてない。
構築と回避と攻撃の為の補佐。この全てを1人では、否1人格では行えない。
構築のナミ、回避と攻撃の為の補佐のモナ。その全てをある程度のサポートをする私。
この3人格揃ったからこそ出来る戦闘方法。
「【斬撃】」
放たれる斬撃をひらりと躱し、急速に加速して上へと上る。
【空縮】で接近して来たサトシさんの剣撃を躱す。
避けて、牽制して、躱して、牽制してを繰り返して遂に完成した。
師匠達との特訓の末、増えて行った深淵と漆黒の妖術。
理由は具体的に分からないが私も成長していると言う事。
悪魔の中でもそこそこの強さはあると思っている私でも、サトシさんよりかは下だ。
それを加味しても、そこそこのダメージは出るだろう。
何故なら、この術は耐性貫通で闇系統以外に特攻があるのだから。
HP100とMP500を消費して発動する。
サトシさんの真上へと移動する。私の右手には既に構築された術式がある。
「『広がれ、滅せよ、この世の全てを深淵によって呑み込め! 汝に絶望を、深淵螺旋砲! 展開!』」
私のナミの声が同時に口から漏れる。
右手の術式が展開され広がる。
かなりの広さ。1人での構築ではそこそこの時間を要する大技。
広がった術式から漏れ出てくる深淵は徐々に勢いを増して勢い、螺旋を描く。
その黒く、底無しの暗さのある螺旋がサトシさんを呑み込み、サトシさんの光を呑み込む。
深淵から漏れ出る光なぞ、存在しては成らぬのだ。
だけど、何となく分かる。
大ダメージは与えれても、倒せれてはいないと。
サトシさんは生きていると。
深淵螺旋が収まり、中から現れるのは翼で身を包み守るようにしている純白の繭。
収まったと分かったのかゆっくりと広げて中から出て来るのは勿論の事サトシさん。
だけど、見えているHPバーは4割まで減っていた。
互いに地面へと降下して着地する。
「流石だな」
「ありがとう、ございます」
「俺の大技を見せてやろう」
⋯⋯見せなくても全く問題ないです!
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