第134話黒巫女召喚士とサトシ
セカイはタツキと戦っていた。
突き出される槍を躱し、懐に入り込み喉を狙って手刀を突き出す。
「お、あっぶね」
かする程度で済んだタツキ。
「流石に手加減は出来なさそうだな。【クイックスチェンジ】」
槍は違う槍へと変わる。
「それが、本来の姿ですか?」
「まぁな。さぁ、俺の槍を躱せるかな!」
セカイに接近して突き出す槍。
セカイは左手で軽く受け流し、右手を添えて横へと受け流す。
その流れるような受け流しに寄って前方へとバランスを崩す。
バランスを崩したタツキに対して膝を上げて蹴り上げる。
「グッ。鎖帷子を仕込んだ軽装では足りないのか⋯⋯」
空中で体を捻り、少しセカイから距離をおく。
だが、すぐにセカイは接近して攻撃を仕掛ける。
「槍だから懐に入ったら問題無いとか思ってないよな!」
タツキは右手に力を入れて滑らせるように槍を後ろへと引く。
先端に近い部分を右手で掴み、セカイの顔を目掛けて突き出す。
「そんな杜撰なやり方で」
「練習してんだよ!」
力の加え方、狙い方。その槍は確かに良い攻撃をしていた。
だが、相手は受け流しや反撃を得意とした武術家ではなければ。
槍の先端を右手で受け流しながら、横にずらして躱す事は可能だ。
だが、セカイはそれでは満足しない。
受け流し、槍のベクトルを自分の方向では無い上へと変えて、槍を蹴り上げる。
咄嗟の事で反応出来ず、されるがままに槍は中へと舞う。
反真楼天龍、
侍同好会のランと戦った時に技名を叫んでいたのは、相手に合わせた結果だ。
「うそん」
「【天龍至点】羅点」
チャクラを拳に集中し、相手の間接を正確に狙い打つスキルを使う。
しかし、相手も上級者。
狙われている場所を見極めて躱す事に徹する。
一進一退の攻防を繰り広げている。
◇
サトシさんに向かって接近して刀を振るう。
大剣で防がれるが、体が中に浮いている状態で右足で回し蹴りを放つ。
左手の甲で防がれる。袴がひらりと揺れ、私の足が見える。
草履からの上、ふくろはぎに形代がある。
インベントリを操作する暇無いと思い、このような準備をしておいたのだ。
どうやって止めているか? 簡単である。
雑貨屋で買えるセロハンテープで適当に貼っている。
形代3枚使用して妖術の術式を構築する。
形代を使う妖術には術式構築に5秒掛かるが、これをナミが予測していたので、グットタイミングで展開出来る。
「風魔、展開。【パーフェクトキューブ】」
横並びの形代3枚が光、中央の形代に集まり黒色の風が巻き起こる。
それが1つの立方体へと変わる。
固定された場所でひたすら攻撃を受ける妖術とスキルのコンボだ。
「ぐああああ!」
「ありゃ?」
予想以上にダメージが入った。
バックステップで距離を取り、整理する。
お祓い棒を持ってないので最大限のダメージは出せないと思った。だが、ナミが予想したよりもダメージが出ている。
それの答えは決まっている。
「サトシさんって、天使?」
「ッ!」
天使、悪魔は特定条件を満たさないと成れないレア種族。
だが、それはあくまで噂程度の代物だ。
しかし、噂が立つって事は天使か悪魔になっている人は存在しているのだ。
その1人がサトシさん。私もである。
「それが分かった所で何も変わらないよ」
「いえ。かなり変わりましたよ」
成程。
悪魔である私が天使の聖なる力的な物を受けていたからモナがピリピリした感じがしたのか。
それに、【風魔】の特攻範囲なら私的に相性が良い。
2発当てれば1割削れる。単純計算20発当てれば勝てる!
『うんなMPあるか!』
うん! だと思った。形代も出さないといけないしね。
「と」
『無駄な思考を入れられると勘がブレるな』
ごめん。
吹き飛ばされ、地面を数回足で触れて止まる。
右手にある刀を逆手持ちに切り替え、左手を地面に添えるように姿勢を低くする。
「ハァァァァ」
特定の呼吸を使い。精神を研ぎ澄ます(ナミ)。相手との距離、狙いを定め(モナ)。足に力を加え、技を使う。技名を言って完璧な形へと補正して貰う。これは、私の役目。
「風鳥羅刹流、低風羅刹」
刀が緑色へと変色し、地を蹴って高速で移動する。
接近して刀を振り、地面に再び着地して後ろに下がり、横に滑るように移動し、接近して振るう。
それを高速で繰り返す。
「グッ【ブロック】」
一撃防がれようが、第二第三の攻撃へと移る!
「【サイクロンスラッシュ】」
サトシさんが回転して大剣を振るう。
技を途中キャンセルして全体重を1度下に向け、反作用の勢いでバックステップして躱す。
空中で数回回転して地面に着地して刀を構え直す。
「速い。あ」
サトシさんが大剣を構え直すが、遠くから聞こえる悲鳴に顔を向ける。
そして見る。闇に寄って貫かれる人。魔法に寄って倒せられる人。黒武者に寄って切り裂かれる人。リンさんランさんは我が
「これは、まずいな。非常にまずい。【裁判所領域】」
サトシさんがそう言った瞬間、空が人工的な光に包まれる。
離れた場所には裁判官の席等など裁判所にある物が現れる。
そして、私のHPバーの下に数字が現れる。
数字は増えて行く。
「それはこれを出してから現れる数字だ。数字が増えればその都度ペナルティが課せられる」
私は人をキルしていない。私は召喚士だ。
イサちゃん達が倒したプレイヤーの数だろう。
「50を超えたのか。AGI、VIT、STRのいずれかが100ダウンしたんじゃないか?」
「⋯⋯そうですね」
「このまま続ければいずれステータスがゼロになり、そしてHPとMPが減って行く」
『ミスるなよ〜〜絶対に増えているって悟られるなよ〜〜』
『ナミ。記憶全部見てんだろ? こいつ、演技は下手なんだよ。仮面で隠れているが、引き攣った笑顔がベッタリと張り付いているでは無いか』
『仮面様々』
うるさいわい!
「【縮地】【断絶】」
急速に接近して来て大剣を振り下ろす。
刀で受け流し、大剣は地面へと衝突して地面に小さな亀裂を作る。
『あっぶねぇ』
『油断していたわね』
ナミの高速な計算と意識完璧リンクしているモナがそれを勘で上手く使い、ギリギリ受け流せた。
いや、完璧じゃなかった。少しHPが減っている。
「【燕返し】」
「それは、見ている。風魔展開」
ふくろはぎから黒色の風が巻き起こり、サトシさんのHPを削り吹き飛ばす。私も吹き飛ぶ。
『スキルって止める事可能なんだ』
ナミがそんな事を呟いていた。
「強い。さっきよりも、速い」
現在カルマポイント100を超えている。我が仲間キルペース速い。
「仕方ない。これを使うか」
サトシさんの持つ大剣の持ち手と刃を繋ぐ所が開く。
何かが、来る。
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